- スバルの【ドライブモードセレクト】って何?
- スバルの【電子制御ダンパー】の特徴って何?
このような疑問にお答えします。
ドライブモードセレクトとは、新型レヴォーグ(STI スポーツ)から採用された、「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」の4種類の走行モードや、ユーザーの好みに応じた設定ができる「INDIVIDUALモード」を搭載したシステムになります。
パワーユニットだけではなく、ステアリングやダンパー、エアコンに至るまでさまざまなユニットが協調制御を行います。
電子制御ダンパーとは、こちらも新型レヴォーグ(STI スポーツ)から搭載され、スバルで初の採用となりました。
路面状況の減衰力を可変制御することによって、操縦安定性や乗り心地向上に貢献するとともに、「ソフトで快適な乗り心地」から「ハードでスポーティな乗り心地」までのドライブモードを任意に変化させることが可能になっています。
新型レヴォーグでは、新エンジン「CB18」や「アイサイトX」に注目が集まりましたが、【ドライブモードセレクト】【電子制御ダンパー】といった新技術も見逃せません。
新型レヴォーグで初採用、2021年に新型を予定している「WRX S4」にも搭載が予測されており、これからのスバルの新型車には欠かせないシステムになってくると思われます。
新型レヴォーグを試乗された人、商談された人も漠然とした内容までしか理解されていない人も多いかと思いますので、この記事では、スバルの新技術【ドライブモードセレクト】【電子制御ダンパー】について、現役メカニックが徹底解説していきます。
スバル【ドライブモードセレクト】と【電子制御ダンパー】を徹底解説
もくじ
スバル【ドライブモードセレクト】について
ドライブモードセレクトについて以下の表にまとめました。
最初からプリセットで入っているモードの一覧です。
モード | コンフォート | ノーマル | スポーツ | スポーツ+ |
SI-DRIVE | I | I | S | S# |
ステアリング | コンフォート | ノーマル | ノーマル | スポーツ |
ダンパー | コンフォート | ノーマル | ノーマル | スポーツ |
AWD | ノーマル | ノーマル | ノーマル | スポーツ |
アイサイト | コンフォート | スタンダード | ダイナミック | ダイナミック |
エアコン | マイルド | ノーマル | ノーマル | ノーマル |
モード特性 | 快適性(高) | 快適性(中) | スポーツ性(中) | スポーツ性(高) |
※INDIVIDUALモードでは、これらの設定を任意に変更することができます。
そして、これら4種類の走行モードを簡単に解説するとこちらの通り。
高級車のような乗り心地や、車内の乾燥を防ぐエアコン制御などの快適性を重視したモード
走りと乗り心地を最適にバランスさせたモード
スポーティながらも乗り心地も犠牲にしないモード
スポーティーなドライビングが可能なスポーツ走行重視のモード
こんな感じ。
それでは、ここからは各項目ごとに特徴を解説していきます。
SI-DRIVEの制御
エンジンの出力特性やCVTの変速プログラムをドライブモードに応じた特性に制御します。
モード | コンフォート | ノーマル | スポーツ | スポーツ+ |
SI-DRIVE | I | I | S | S# |
「S#」は、エンジン性能を最大限に引き出すレスポンス重視のモードです。アクセル操作に対して、ダイレクトな反応と加速感を得ることができます。オートステップ変速時は、ノーマルモードに対してクロスレシオ化しています。
「S」は、どの車速域からでもレスポンスの良い加速が可能。ゆとりのあるグランドツーリング性能を発揮するオールラウンドな走行モード。
「I」は、アクセル操作に対するパワーの出方を緩やかに設定し、スムーズな走行性とエコドライブを両立。雪道などの滑りやすい路面でも扱いやすい滑らかな出力性能になっています。
ステアリングの制御
操舵力特性の異なる3種類のモードを設定。それぞれのモードにしっかりと差をつけることで、キャラクターの変化を感じれるようになっています。
モード | コンフォート | ノーマル | スポーツ | スポーツ# |
ステアリング | コンフォート | ノーマル | ノーマル | スポーツ |
「スポーツ」は、ワインディングに攻めれるようなモード。低速からしっかり感のある重めの操舵力になっています。
「ノーマル」は、操舵安定性と乗り心地を両立させたモード。
「コンフォート」は、リラックスしてゆったりと乗れるモード。低速域は軽く、取り回しを重視した操舵力となっています。
ダンパーの制御
減衰力特性の異なる3種類のモードを設定。ドライバーの意思や好みに合わせた減衰力特性の選択を可能としています。
制御のイメージとしては、必要な時のみ減衰力を高め、車体のロールやピッチングを抑えます。
モード | コンフォート | ノーマル | スポーツ | スポーツ+ |
サスペンション | コンフォート | ノーマル | ノーマル | スポーツ |
「スポーツ」は、ワインディングを攻めるような走りを。
「ノーマル」は、操舵安定性と乗り心地を両立させたモード。
「コンフォート」は、リラックスしてゆったりと乗れるモードになっています。
AWDの制御
後輪への駆動力伝達特性の異なる2種類のモードを設定。
スポーツモードでは、アクセルOFF時もトランスファーの伝達トルクを高く保つことで、後輪への駆動力を強める設定としています。
※アクセルOFF時も高い伝達トルクを維持し、旋回力や応答性を高めています。
モード | コンフォート | ノーマル | スポーツ | スポーツ+ |
AWD | ノーマル | ノーマル | ノーマル | スポーツ |
車両挙動の違いイメージ
- 前輪駆動力
- 合力
- 前輪コーナリングフォース
スポーツモード時は、トランスファーの伝達トルクを高く維持し、前後輪間のトルク変動を抑えています。
これによって、アクセルON/OFFによるアンダーステア/オーバーステアの挙動差が発生しにくくなり、安定した旋回を行うことが可能になります。
さらに、後輪への伝達トルクが増えたことで前輪へのコーナリングフォースが増大し、旋回性を高めています。
ノーマルモード時
エンジントルク増にともなって、後輪駆動力が増大。
前輪が必要なコーナリングフォースを得るまでの時間があり、旋回ラインと操舵のズレが生じます。
アクセルON時は、前輪駆動力が高く、アンダーステア傾向が強いです。
スポーツモード時
挙動と操舵のズレがない、狙い通りのコーナリングが可能。
アクセルOFFでも後輪への駆動力配分が高いため、即座に必要なコーナリングフォースが得られます。
また、トルク変化による挙動の変化が少ないのも特徴です。
アイサイトの制御
クルーズコントロールの加速特性が異なる3種類のモードを設定。
モード | コンフォート | ノーマル | スポーツ | スポーツ+ |
アイサイト | コンフォート | スタンダード | ダイナミック | ダイナミック |
「ダイナミック」は、強い加速感を得られるモード。加速度の立ち上がりはスタンダードと同じですが、最大加速度は120%になります。
「スタンダード」は、基準となる加速度です。
「コンフォート」は、最大加速度がスタンダードの80%です。
エアコンの制御
空調制御特性が異なる2種類のモードを設定。
モード | コンフォート | ノーマル | スポーツ | スポーツ+ |
エアコン | マイルド | ノーマル | ノーマル | ノーマル |
「ノーマル」では、通常の空調制御。
「マイルド」では、内気循環を優先させ、風量を弱めた空調設定です。温湿度センサーを活用し、除湿を抑制した制御によって乾燥感を低減。また、体感温度は変えず、風量を弱めにしています。
スバル【電子制御ダンパー】について
電子制御ダンパーシステムは、新型レヴォーグからスバルで初めての採用となります。
路面状況に応じて、ダンパーの減衰力を可変制御することにより、操舵安定性や乗り心地が向上しています。
ではここからは、スバルのドライブモードセレクトと密接な関係にある電子制御ダンパーについて解説します。
スカイフック理論
電子制御ダンパーシステムは、「スカイフック理論」に基づいて開発されています。
スカイフック理論とは、「物体を空中の架空の線に宙づりの状態にして移動づることができれば、常に安定した姿勢を保つことができる」という考え方です。
車体が安定した姿勢を保つように電子制御ダンパーで減衰力をコントロールします。
ばねとショックアブソーバーは車体に並列に取り付けられており、減衰力は車体とタイヤとの相対速度に比例し、減衰力を高くすると、ばね上の共振より高い周波数領域で路面振動の伝達が大きくなり、乗り心地が悪くなってしまいます。
天空に取付けができれば、減衰力は車体の上下速度のみに比例し、全周波数領域で乗り心地がよくなる。
電子制御ダンパーCUで、車体上下の加速度を計算し、上下速度を求め、ショックアブソーバーの圧力制御ソレノイドバルブにより、この速度に比例した圧力を発生させることで、天空取付けの効果を実現できるわけです。
システム図
上記がシステム展開図になります。
加速度センサーの役割は、フロントストラットの加速度センサーで、バネ下の加速度を検出。
電子制御ダンパーCUは、バネ下の加速度とバネ上の加速度の差分で段差の大きさを検出し、VDC CUからピッチ/ロール情報などを合わせて、減衰力の調整を行います。
バネ下の加速度は、シート下の電子制御ダンパーCU内蔵の加速度センサーで検出します。
3種類のフェイルセーフ
センサーやECU、制御回路に異常が発生した場合、以上の程度によって「軽度」、「重度」、「致命的」の3段階で行います。
軽度な異常とは、例えば左右どちらかの加速度センサーが特性不良で異常が発生した場合などです。
この場合は、他のセンサー信号で情報を補うことで、継続して制御します。
重度な異常とは、各加速度センサーの異常や、ステアリングアングルセンサーとの通信異常を始めとした「CAN通信異常」が発生した場合などです。
この場合は、減衰力を固定します。
致命的な異常とは、電子制御ダンパーCUの異常や電源電圧の低下、ソレノイドバルブ系統の異常などです。
この場合は、減衰力制御を停止します。
ダンパー脱着時の注意点
例えば、足回りが損傷し、ダンパー交換になった場合の注意点です。
電子制御ダンパー脱着時は、配線の巻き込みや、取り回しには十分注意して下さい。
なお、電子制御ダンパー脱着後は、必ずディーラー専用の故障診断機(スバルセレクトモニター)でVDCセンサー中立点設定モードの設定およびレーンキープアシスト学習値クリアを行うこと。
学習を行わなければ、コンビメーター内に電子制御ダンパーシステム警告灯が点灯し、正常に作動しません。
足回り交換時は、専用設定が必要になることを注意しなければなりません。
ベストなモードとは
ドライブモードセレクトを積極的に活用することで、新型レヴォーグの魅力をもっと引き出すことができます。
個人的におすすめなのは、6つのコンポーネントの制御を自由に組み合わせることができる「INDIVIDUALモード」です。
「プリセットされている4種類のモードセレクトの中でベストなモードは?」と聞かれると、走行する環境にかなり変わってきます。
例えば、「スポーツ+」では、高速道路ではグッと重みのあるハンドリングが高い直進安定性を感じさせ、安心感を得ることができます。
ただ高速道路と言っても、ワインディングな高速では快適であっても、新しくキレイに舗装された高速ではサスペンションが硬過ぎるような感覚もあります。
また市街地では、ステアリングが「スポーツ」となるのでハンドリングがかなり重めで、少し疲れます。パワーユニットが「S#」のため、燃費も心配。
こうした場合、「スポーツ」を選択すると、パワステ、サスペンション、AWDは「ノーマル」になってしまいます。
そんな時に「これはちょっと違うなー」「自分で自由に組み合わせたいなー」と思ってしまうわけですね。
そこでおすすめなのが、パワーユニットが「S#」、ステアリング、サスペンション、AWDを「スポーツ」、エアコン「ノーマル」、アイサイトはムダに加速感を感じることが多いので「コンフォート」を選択。
ちょっとスポーティな感じですが、高速道路では追い越しもスムーズにできて、しっかりとしたサスペンションでカーブも安心。ハンドルもしっかりと重みもあって、気持ちよくレヴォーグを流すことができます。
ゆっくり巡航されたい人や下道がメインの人は、パワーユニットをお好みで変えていけば良いと思います。
好みに乗り味を変えれる「INDIVIDUALモード」ですが、少し注意が必要。
パワーユニットが「S#」で、サスペンションが「コンフォート」に、パワステが「スポーツ」みたいな組み合わせになると取り回しが悪くなるかなと…。
ダイレクト感のある走りにロールやピッチングの制御が少しマイルドな「コンフォート」に、どっしりとしたハンドリングのパワステ「スポーツ」はチグハグな挙動になるんじゃないかなと思います。
それぞれの特徴をしっかり把握した上で、「INDIVIDUALモード」を活用していきましょう。
なので、プリセットのモードで楽しみながら、慣れてきたころに自分好みに設定されてみてはいかがでしょうか。
今回は以上になります。