新世代アイサイト用の最新ステレオカメラを徹底解説|安心と楽しさを支える裏の番長

新型レヴォーグのアイサイトからステレオカメラが変更になったけど、何が変わったの?

このような疑問にお答えします。

この記事で分かること
  • 新世代アイサイト用の最新ステレオカメラのシステム概要
  • 新世代アイサイトのプリクラッシュブレーキの概要

この記事を書いている筆者は、スバル車を5台乗り継いできたスバリスト。

最後まで読んでいただくことで、新世代アイサイトに搭載されている最新ステレオカメラがどのような役割をしているのか詳しく分かります。

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新世代アイサイト用の最新ステレオカメラとは

新型レヴォーグから搭載された「新世代アイサイト」ですが、高度な制御が要求される近年の安全装置に対応すべく、最新のステレオカメラに変更になりました。

全面刷新したステレオカメラでの進化は以下の通り。

  • 視野角の拡大
  • 3D画像処理エンジンの半導体部品の進化
  • 画像認識アルゴリズムの進化
  • ステレオカメラ取り付け位置の変更

これらにより衝突回避性能を向上させています。

新世代アイサイト用の最新ステレオカメラは、ステレオカメラの位置を変更することでこれまでの弱点であった「遠方検知」に対する弱点を払拭しています。

さらに新型レヴォーグでは、この新世代アイサイトの基本機能を全グレードに標準装備するほどのコストパフォーマンスを実現しており、性能・コストのバランスが非常に優れていると考えます。

新世代アイサイト用ステレオカメラの進化により、スバルが目指す「2030年の死亡事故ゼロ」に向けて、さらなる安全性向上に寄与されます。

1:アイサイト用ステレオカメラの歴史

スバルのステレオカメラ開発は1989年から行われていました。

アイサイトは最近発売された印象ですが、歴史を紐解いていくと、相当前からスバルは手をつけていました。

当時は狭い個室で、数名の開発スタッフでのスタートだったと聞いています。

  • 「ステレオカメラで運転を支援?」
  • 「クルマが自動で運転してくれる?」
  • 「そんなことできるわけないじゃん」

1990年代の自動車業界からすると全く想像のつかないシステムだったので、当時の開発スタッフは肩身が狭かったそうです。

運転支援システムには、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、前方衝突回避、車線中央維持、AT誤発進防止機能など、さまざまな機能が搭載されています。

昨今では、自動車アセスメントにて予防安全性能の評価が行われ、評価結果が公表されることなどから、世間からの関心はとても高まっています。

これらの技術には、レーダーやカメラなどのセンサーは不可欠であるため、運転支援システムの競争激化にともなってステレオカメラや各種レーダーの開発が盛んになっています。

この流れに先駆け、スバルは1999年に世界で初めてステレオカメラによる運転支援システムを発売しました。

このシステムでは、ステレオカメラで先行車と白線を検知することによって、ACCと車線逸脱警報(LDW)を実現しています。

2003年には、ミリ波レーダーとステレオカメラを統合したシステムを発売。

この統合システムは、運転支援機能をより充実させるものでした。

しかし、ステレオカメラとレーダーを組み合わせたシステムは、コストが非常に高いです。

この問題を解決するために、ステレオカメラ単独でのプリクラッシュブレーキや全車速ACCなどを実現したシステム「アイサイト」を2008年に発売。

2010年には、プリクラッシュブレーキでの完全停止を実現した「アイサイトver.2」を発売しています。

ステレオカメラは、レーダーと比較して物体の形状、大きさ、位置を正確に検出でき、その結果歩行者やその他の物体に対する衝突を正確に判定することができるようになりました。

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このため、スバルのステレオカメラによる運転支援システムは、レーダーによるシステムと比較して、アセスメントのシナリオ以外を含めた、リアルでのプリクラッシュブレーキ性能が高いというわけです。

2:ヴィオニア社製ステレオカメラに変更

アイサイトの中核となるステレオカメラですが、これまで採用していた日立オートモティブ製から海外製へ変更されました。

アイサイトは2008年に現行のベースとなる第1世代が登場し、その時点から日立オートモティブと共同で開発してきました。

その後も改良を重ねてアイサイトVer.3まで世代を重ね、その優れた制御技術は世界でもハイレベルな水準にあり、それがスバルの運転支援システムに対する評価を高めてきたのは間違いないです。

アイサイトの課題となっていたのは、ステレオカメラの検知範囲の狭さです。

この狭さゆえに、ACC制御中の急な割り込みに対処できないことも少なからずあったり、近年は交差点における衝突被害軽減ブレーキへの対応が自動車アセスメントの評価対象にもなっています。

安全性を少しでも高めたいスバルとしてもこれらの対策は必須条件。

日立オートモティブにもその改良を求めたと思われますが、結果としてその求めに応じたのはスウェーデンのVeoneer(ヴィオニア)社でした。

3:【ハードウェア】マイコンの追加

新世代アイサイト用ステレオカメラの進化まとめ【現役社員が徹底解説】【ハードウェア】マイコンの追加

新世代アイサイトに搭載される、新規開発のステレオカメラは第5世代品となります。

主な変更点は大きく分けて4点あります。

1つ目は、視野角拡大のためのレンズ広角化とCMOSイメージセンサーの高画素化です。ステレオカメラが、より多くの事故シチュエーションに対応するために、「アイサイトver.3」搭載の第4世代ステレオカメラに対して80%広角化したレンズを実装しました。

一方、デジタルイメージセンサーを使ったステレオカメラにおいて、レンズを広角化すると望遠性能が低下します。そこに対応するため、CMOSセンサーを高画素化し、望遠性能を第4世代ステレオカメラと同等の性能を保ったまま、広角化に実現しました。

2つ目は、3D画像処理エンジンの高画素化対応、演算速度の向上とこれに伴う画像認識、制御マイコンの処理速度向上です。広角にともなってCMOSを高画素化したことや、多機能化、高度化に対応するため、従来システムに対して性能を向上させています。

3つ目は、カメラ本体のフロントガラス取り付け構造化。

4つ目は、機能安全対応化です。各半導体部品では機能安全対応を実施しており、とくに画像認識マイコンへの対応としては、安全機構を主処理としたマイコンを追加しています。

上記の画像はハードウェアのブロック図です。

第4世代ステレオカメラからの変更点は、機能安全対応マイコンの追加にあります。

4:【ソフトウェア】高度化に対応した処理

新世代アイサイト用ステレオカメラの進化まとめ【現役社員が徹底解説】【ソフトウェア】高度化に対応した処理

第5世代ステレオカメラに実装したソフトウェアの変更点は3点あります。

1つ目は、画像認識アルゴリズムの進化です。

対向車や歩行者、横断自転車といったプリクラッシュブレーキに必要な対象物体の拡大、高度運転支援に対応するための遠方の車両認識性能の向上、拡大した画角に対応するための自動キャリブレーション機能の高度化を行い、新世代アイサイトシステム各機能の実現に寄与しています。

2つ目は、マルチコアに対応した処理の分散化です。

ハードウェア搭載の画像認識マイコン、制御マイコンが双方マルチコア化したことにともない、双方に対しマルチコア対応OSの導入およびタスクを分散処理化したことです。

ハードウェアリソースを効率的に活用することで、従来からの画像処理および車両制御処理の高度化と、新世代アイサイトシステムで実現する各機能に必要な追加処理の実装を行うことに実現いています。

3つ目は、機能安全対応ソフトウェアの導入です。

高度化が進み、さまざまな振る舞いをするアイサイトシステムの中で、画像認識マイコン、制御マイコンの双方において各マイコンの出力の監視を実施し、各要素において故障が発生した際にも、意図しない振る舞いを最小化することを狙っています。

5:ガラス直付けで「遠方検知が可能」

アイサイトは、ステレオ測距のみで遠方検知を行うため、両カメラ間の距離を大きくとる必要があります。

結果、部品が大きくなることからドライバーへの視認性やワイパーでの払拭性能との両立を行うことがつねに課題となります。

第5世代ステレオカメラでは、周辺部品に干渉しないように配置し、ワイパー払拭エリアに収めるため、フロントガラスへの直接取り付け構造になりました。

第5世代ステレオカメラでは、カメラ視野角をレンズフードにて覆い、レンズの保護やフロントガラスへの映り込み防止を実施。

同時にドライバー視界への影響を最小限にするため、レンズフードが最小サイズとなるように、ステレオカメラの取り付け位置やレンズフード形状を新たに設計しました。

この変更にともない、フロントガラスのカメラ画角領域に対し、デフォッガのみで曇りを解消することが困難となったため、第5世代ステレオカメラでは防曇システムを導入し、窓曇りによるカメラ視界不良を防いでいます。

6:新機能「防曇システム」

新世代アイサイト用ステレオカメラの進化まとめ【現役社員が徹底解説】新機能「防曇システム」

アイサイトの耐環境性を高め、お客様が使用できる時間をより長く確保するため、ステレオカメラ前方のフロントガラス内側を防曇/徐曇するシステムを新規に搭載しました。

上記の画像のように、ヒーターパッチをレンズフード下面に貼り付けし、レンズフード越しにフロントガラスを加熱することで、防曇/徐曇機能を実現しています。

防曇システムの制御は、ステレオカメラで行っており、車外気温やエアコン情報等をもとにフロントガラスの曇り易さを推定し、ヒーターパッチのON/OFFを判断しています。

加えて、現在の制御情報やヒーターパッチの温度等を監視することで、防曇システムの故障検知をつねに行っています。

新世代アイサイトのプリクラッシュブレーキ

近年、プリクラッシュブレーキシステムは多くの新型車に装備されています。

前方のクルマや横断歩行者に対して、衝突の可能性が高い場合にブレーキを作動させるコトにより被害軽減や衝突回避することが可能になります。

プリクラッシュブレーキシステムによる事故低減率の効果が認知されるようになって、国内では2018年度から国交省による衝突被害軽減ブレーキ認知制度が始まっています。

>>衝突被害軽減ブレーキ認知制度

ここからは、新世代アイサイトのプリクラッシュブレーキの開発の狙いと機能、メカニズムについて解説します。

アイサイトXの運転支援機能については、以下をご覧下さい。

1:プリクラッシュブレーキの開発アプローチ

平成29年度、国内市場の事故統計から事故件数を見てみると、「追突事故」の件数がもっとも多く、続いて「出会い頭での事故」が24.5%、右左折時の事故が12.7%となっており、これらの事故に対応できるシステムを開発することをスバルは重要視しています。

さらに、交通弱者である歩行者や自転車との死亡事故は、「横断中」がもっとも多くアイサイトXでは、以下の事故に対応するシステムを開発しています。

  • 追突車両、歩行者、自転車
  • 横断する歩行者、静止している歩行者
  • 横断する自転車←【新機能】
  • 対車両の出会い頭←【新機能】
  • 交差点での右左折時←【新機能】

2:プリクラッシュブレーキのシステム構成

アイサイトXのプリクラッシュブレーキは、あらゆる事故に対応するために検知できる領域を増やす必要がありました。

そこで、視野角を2倍に弱拡大したステレオカメラと77GHzのミリ波レーダー(前側方レーダー)を使ったシステムを採用。

ステレオカメラは、クルマや歩行者、自転車等の立体物に対して、距離や大きさなどの3D環境認識が可能であり、自車の前を横断してくる歩行者・自転車を精度よく検知できます。

ミリ波レーダー(前側方レーダー)では、ステレオカメラの視野角外から横断してくるクルマを遠い位置から検知します。これによって、出会い頭での事故や横断中の事故のあらゆるシチュエーションに対応可能になってます。

2つのセンサーで検知した対象物の情報をもとにステレオカメラ内の制御ECUで衝突判断を行い、メーターへの表示と警報、ブレーキ制御を組み合わせるコトでドライバーへの注意喚起と衝突の被害軽減または回避を行います。

3:プリクラッシュブレーキ機能の概要

アイサイトver.3から進化したプリクラッシュブレーキシステムは5つあります。

高速道路での前方停止車両の把握

高速道路での死亡事故は、相対速度が高い追突が多くの割合を占めています。

これらの事故に対応するために、追突時のプリクラッシュブレーキの性能向上を実現。

アイサイトXでは、物体認識アルゴリズムの強化、地図ロケータユニットから高速道路本線走行中の情報を取得することで、制御対象物かどうかの判断と信頼性を強化。

ですが、プリクラッシュブレーキの介入タイミングが早くなるとドライバーの通常運転に対して、早期作動が問題になってきますよね?

そこで、高速道路では渋滞最後尾のクルマに対して、最適なプリクラッシュブレーキタイミングとなるように適合し、ドライバーへの通常操作に影響がないように開発されています。

その結果、大きい減速度を早く出せるようになり、高速道路本線上の衝突回避可能な速度域を引き上げ、重傷事故の低減を実現しています。

出会い頭での横断車両の把握

スバル初採用となるミリ波レーダー(前側方レーダー)は、横断しているクルマを遠い位置から検知できるようになり、単眼カメラを含め前方センサーでは検知が厳しい「出会い頭事故」に対応した「前側方プリクラッシュブレーキ」を実現。

作動速度域
  • 自車速度が約1〜20km/hで「ブレーキ」
  • 自車速度が約1〜60km/hで「警報」

警報やブレーキの制御判断は、ステレオカメラ内のECUで実施するシステム構成にするコトで、従来のプリクラッシュブレーキと連携可能になっています。

同ECU内での処理にすることで、ブレーキの制御指示などのノウハウを前側方プリクラッシュブレーキ開発に活かされています。

警報についてですが、出会い頭事故は追突事故とは違って、対象物がドライバーの視界に入らないケースもあって、警報のタイミングが非常に重要です。

そこで、対象が自車横方向に高い速度で移動しているため、自車の減速量が少なくても対象が自車の目の前を通りぬけることで衝突回避できる特性をスバルは着目。

対象が自車の目の前を通りぬけることで衝突回避できるタイミングを狙って適合し、ドライバーにとって最適なタイミングでの警報を実現しています。

交差点での対向車や右左折時の横断歩行者の把握

出会い頭に次いで、主に交差点で自車が右左折しているときの対向車や対向歩行者との衝突事故が多いです。

これらの事故に対応するために、自車がカーブ時のプリクラッシュブレーキを実現。

自車がカーブ中の衝突判定には、自車と対象物の進行路の推定精度が重要になります。

アイサイトXでは、自車のカーブ軌跡の算出方法を改良し、自車および画像上の対象物の進行路の推定精度を向上させています。

また、制御対象となる対向車および歩行者の認識性能に加え、ステレオカメラの強みである3D距離情報を活用した車両コーナー位置検出により、進行路推定のロバスト性を向上。

そしてこれら認識情報をもとに衝突位置を推定し、実路走行をベースとした衝突判断によって、カーブ時のプリクラッシュブレーキを実現しています。

横断自転車の把握

新世代アイサイトの最新カメラは横断自転車を把握

国内における自転車の死亡重症事故の約半数は、横断中の事故です。

これらの事故を解決するために従来のアイサイトver.3に対して視野角の拡大し、特微量を機械学習することで横断速度の高い自転車に対しても認識可能となっています。

また、従来のブレーキシステムに比べて、減速応答性能が高い電動ブレーキブースターを搭載することでプリクラッシュブレーキ時の制動距離を短縮し、衝突回避性能と不要な作動性能の両立を実現しています。

ブレーキング制御

新世代アイサイトの最新カメラのブレーキング制御

新型レヴォーグでは、プリクラッシュブレーキの減速応答性能が高い電動ブレーキブースターを採用しています。

これによって、最大減速度を発生させるために必要なブレーキ圧まで昇圧する時間が短くなり、ステレオカメラ内で衝突判断して減速指示を出したあと、すぐに最大減速度を出せるようになっています。

プリクラッシュブレーキによる制動距離が短くなったことにより、特に対象物との距離が短く急減速が必要な場合や、飛び出し歩行者、高速域でプリクラッシュブレーキが作動したときの速度低減効果を高めています。

まとめ

新世代アイサイト用ステレオカメラの進化まとめ【現役社員が徹底解説】アイサイトの最大の武器は「ステレオカメラ」

スバルのアイサイトの最大の特徴は、ステレオカメラだけで自動ブレーキや先行車追従、車線維持支援といった、いわゆるADAS(先進ドライバー支援システム)の機能を実現していることです。

他社のシステムは、同様の機能を単眼カメラとミリ波レーダーの組み合わせで実現している場合が多い。

ADASの機能を実現するには、物体の形状を認識、物体との距離を認識、およびその物体が何なのかを認識、という3種類の認識をしなければなりません。

単眼カメラからの画像では、物体の形状や、その物体が何なのかということは分かりますが、物体との距離は分かりません。

そこでミリ波レーダーを併用するわけです。

しかし、アイサイトのステレオカメラは、人間の目と同様に、左右のカメラの誤差を利用して物体との距離を測定します。

この誤差が大きいほどその物体が近いと判断できます。

この方式の弱点は、遠くの物体ほど視差が小さくなるため、距離測定の誤差が大きくなることです。

左右のカメラの距離が大きいほど、またカメラの画素数が多いほど精度は高まりますが、そうするとステレオカメラが大きくなり、高コストにもなってしまいます。

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新世代アイサイトは、ステレオカメラの位置を変更することで「遠方検知」に対する弱点を払拭し、さらに新型レヴォーグでは、この基本機能を全グレードに標準装備するほどのコストパフォーマンスを実現。

性能・コストのバランスが年々良くなっているのがさずがスバルだと思います。

今回は以上です。

2件のコメント

非常に興味深く読みました。
気になったのが「新世代アイサイト」と「アイサイトX」の
定義が曖昧だと思われる点です。

私の認識では、新型レヴォーグで言いますと、
全グレードに標準装備なのが「新世代アイサイト」で
それにオプションとして付加された
高度運転支援機能(渋滞時ハンズオフ、カーブ・料金所減速等)が
「アイサイトX」という認識です。

コメントありがとうございます。

その認識で正しいです。
記事の冒頭が定義が曖昧になっていましたね。

記事修正致しました。

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