このような疑問にお答えします。
自動車工具の中でも使用頻度が高いハンドツール「ソケット」。
「耐久性の高いソケットを使いたい」
「狭い箇所でもアクセスできるソケットが使いたい」
「品質の良いソケットを使いたい」
使用頻度が高いソケットだからこそ、ハイブランドで揃えたいところですよね。
実際に筆者もスナップオンで揃えています。
毎日使う道具こそ良いものを使いたい、そしてボルト・ナットを極力痛めないように作業するためにも、ソケットには投資してきました。
ただ、国産ブランドも気になりますよね。
となってくるとネプロス?となるかと思いますが、いかんせん手が届きにくい。
ネプロスの品質は国産ブランドの中でも最高級レベルで、歴史が長いスナップオンに匹敵するほど。
それなりに品質も良くて、手が届きやすいソケットはないのか。
そんなあなたには「コーケン Z-EAL」を強くおすすめします。
ソケット工具専門メーカー・山下工業研究所(Ko-ken)の会社設立50周年を前にした2009年、次世代向けの提案として「Z-EAL」シリーズを発売します。
最近の自動車整備は狭い箇所での作業が多くなってきています。
自動車整備市場の要望とコーケンの提案で立ち上がった新企画「ショートソケットプロジェクト」の名称だった「Z-EAL」は、10年あまり経った今ではフルラインナップが揃っていますが、始まりは「限界まで短いソケットを作る」という思い切ったものでした。
この明確でシンプルな目的のために、コーケンではJIS/DIN規格に制限されず、実用的で実践的なソケット開発に取り組んでいます。
【雑談】コーケン Z-EAL(ジール)は次世代のスタンダート工具になる!?
わたしはかれこれ10年以上、国産ディーラーで勤めてきました。
仕事でメインで使っている工具は、KTC、スナップオンあたりが主ですが、ここ最近にしてコーケン Z-EALのハンドツールを買い足すようになってきています。
なぜかと言うと、お値段以上の働きをしてくれるからなんですね。
価格と品質のバランスがこれほど良いブランドは、コーケン Z-EALが唯一無二だと思ってます。
我々メカニックのスタンダート工具といえば「KTC」のイメージが強いですが、次世代は「Z-EALがスタンダート」になる日が来るかもしれません。
もくじ
コーケン Z-EAL(ジール)は次世代のスタンダート工具になる!?
まず「コーケン(山下工業研究所)」とはどのようなブランドなのか。
静岡県掛川市に本社を置き、駆動工具を専門ブランドとして、ソケット・ソケットレンチを主力商品にし、設計・開発・販売を行なっている、いわば基本ハンドツールの専門ブランドです。
また、アイテム数が非常に多く、215mmのソケットなどかなり特殊なものまでラインナップがあり、あらゆる自動車整備に対応できます。
ハンドツールの中でも、ソケットレンチに重きを置いており、世界的にも高いシェアを占めています。
とにかく良いものを作れ
「とにかく良いものを作れ」
これは創業者・山下宗一郎の言葉です。
山下 宗一郎は、1889年掛川に生まれました。
1907年に上京すると英語学校に学び、わずか1年後の1908年に渡米しています。
アメリカに渡ると自動車学校を卒業。
フォードの支店長宅にメイドとして住み込み、メカニック、運転手という仕事を真面目にこなし、人柄を認められてフォードに入社。
生活の基盤を作ると、その後16年間をアメリカで過ごしたそうです。
その後、フォードの横浜工場設立のため、1925年に帰国。
1927年からは大阪のGMに就職していますが、日米関係の悪化を受けてGMが撤退すると、1940年に大阪で山下工業株式会社を設立。
1945年に工場が戦争による被害を受け掛川市に帰郷し、昭和21年に山下工業研究所として再スタートしました。
なので工場があるのは静岡県掛川市。
工具メーカーの多い新潟でもなく、大阪でもなく、他にほとんど工具メーカーもない茶畑に囲まれた長閑な場所にあります。
現在でも静岡県掛川市の国内1拠点で製造を行っており、製造に必要な鍛造・切削・熱処理など、ほぼすべての工程を自社で行える体制を構築し、静岡から世界約60ヶ国へこだわり抜いた製品を届けています。
日々世界各国から集まるユーザーの意見・ニーズを分析し、使用感・外観に加えて、感覚的な「Ko-kenらしさ」も考慮した総合的な製品開発を行っています。
ソケット専門ブランドとしてのラインナップの多さの理由は、若くして渡米した山下 宗一郎の「グローバルな姿勢」がルーツなんだと、歴史を見るとなんとなく伝わってくる気がしますね。
世界を惹きつける個性派ブランド
コーケンの工具には、メカニックの中でも信者と言われるほどの熱狂的なファンが一定数います。
しかし、コーケンの製品は、ホームセンターのような小売店の店頭にはほとんど並ばないので、一般のユーザーの目に触れる機会は少ないです。
なので日本国内を見渡すとあまり知られていない、「知る人ぞ知る」ブランドなんですね。
若手のメカニックと工具の話をしても「コーケンですか?名前だけは聞いたことあります!」みたいなこともしばしば。
一方、ヨーロッパにおいては、極めて高い評価を得ています。
国によっては、スナップオンと並ぶ高級工具メーカーとして扱われているほど。
一時はコーケン製品の偽物やコピー商品が出回る事態に。
コーケンの国内外の販売比率をみると、日本国内が約30%にとどまるのに対し、国外向けは70%だそうです。
山下 宗一郎の意志を引き継ぐグローバルなブランドに成長しています。
ソケット単体の品質もさることながら、現場のメカニックの声を落とし込んだオリジナリティ溢れる工具も魅力の1つ。
代表作で言うと、面で捉えて力点を分散させる事により高いトルク伝達を可能とした「サーフェースソケット」や、狭いエンジンルームでも安心して使える様にマグネットを使わずスチールボールを使ってボルト・ナットを保持する「ナットグリップソケット」、空転トルクが他社品に比べ非常に軽い「フラップ式ラチェットハンドル」などがあります。
最近では、製造機器などで使用される特殊ネジ用の工具の供給など、決して大きなマーケットだけではなく、流通する量が限られたボルト、ナットでも工具はコーケンが用意するという強い意思が感じられるラインアップを取り揃えています。
専門ブランドだからこその地味で真摯な姿勢が、世界の工具ファンを惹きつける個性派ブランドとして、唯一無二のポジションを確立しているのでしょう。
同社の「ナットグリップソケット」や「オフセットエクステンション」などは普段仕事でも大活躍しています。
コーケンには「かゆいところに手が届くハンドツール」がたくさんあります。
メカニック向け工具「Z-EAL」
2009年にコーケンでは、標準ラインアップの他に、より自動車整備を意識したコンパクト設計の「Z-EAL」というシリーズを展開します。
どんな工具でも、世界共通で必要充分なレベルを満たすには一定の基準が設けられています。
ソケットレンチの場合だと、差込角の寸法が世界共通だからこそ、メーカーを超えた組み合わせが可能です。
ただ、基準に縛られすぎる工具は、新しい価値を生み出しにくい。
そんな「新しい価値」を開発コンセプトを生み出されたのが「Z-EAL」シリーズ。
冒頭でも書いた通り、近年のクルマは、厳しい燃費基準をクリアするために部品が小型化・複雑化してきています。
そんな作業性が悪くなってきている自動車整備業に対応するため、ラチェットハンドルやソケットのコンパクト化を徹底。
さらにソケットレンチに付きものの”ガタ”を排除するため、ソケット差込部の凹部と六角部の公差を、既存の工業規格より厳しく設定しています。
そして、ラチェットハンドル凸部のボールが収まるソケット凹部のディンプル形状まで新設計することで、驚くほど一体感が高く遊びが少ないのがZ-EALの特長。
スペック上を見ても、ごく普通のラチェットやソケットなのですが、実際に使ってみると感動します。
コーケンが一貫して重視する空転トルクの軽さ、ボルトナットが緩んでハンドルが十分に振れない空間でもラチェットが機能します。
これまでのコーケンの良さを継承しつつ、価格も抑えながら、お値段以上の働きをしてくれる「Z-EAL」シリーズは、自動車整備における新たな扉を開き、これからのスタンダードになるでしょう。
趣味性が高い海外の工具も魅力的ですが、実用的で「本気でやる」場面でも、期待以上の仕事をしてくれるのが「Z-EAL」シリーズです。
これから新たに工具を集めていきたい人には、自信を持っておすすめできます。
筆者が使っているアイテム5選
ここからは、筆者が実際に愛用しているコーケン&Z-EALの製品をご紹介します。
これからコーケン製品の購入を考えている人には、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。
3725Z
コーケンのハンドツールを語る上で、ラチェットレンチは欠かせない存在です。
その中でも「3725Z」はもっともスタンダードであり、これから工具を集めていく人はここから始めてみてはいかがでしょうか。
コーケン伝統の「空転トルク」。
空転が軽いことで、緩め途中や締め途中のボルトナットと一緒にソケットが戻ってしまうことがなく、最初から最後までラチェットハンドルを使ってボルトナットを回すことができます。
24歯の2枚爪や36歯の同社製「Z‐EAL」シリーズの1体爪は、歯数という分かりやすいスペックでは表現しにくいのですが、ラチェットハンドルの使い勝手を大きく左右する空転トルクの軽さがとても魅力的なスタンダートラチェットハンドル。
これまでは「空転トルク」×「36枚ギヤ」を一貫してこだわり続けてきたコーケンですが、2021年には「72枚ギヤ」へとマイナーチェンジしています。
ギヤ数を増やせばハンドル振り角が小さくなりますが、本質的にラチェットの多ギヤ化と空転トルクの軽さは相反します。
ただ、Z-AELの場合は、多ギヤ化と空転トルクの軽さを両立するための研究を5年費やし、「コーケンも多ギヤ化すればもっと使いやすくなるし、買います」というユーザーの声に応え、史上最高のラチェットハンドルを完成させました。
3725Zについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ラチェット・ソケット・ソケットレールがセットになったエントリーセットについてはこちらの記事で解説しています。
3726Z-280
こちらは、3726Zのロングモデル+首振り機能をプラスしたアイテム。
「エンジンルームの作業を1つのラチェットハンドルで」という人には丁度いい長さです。
筆者が新しくメインのラチェットを買い直す時は、大体この長さ。
さらに首振り機能が追加されているので、あらゆる場面での作業に対応できます。
「スタンダードラチェットじゃ物足りない…」という人には「3726Z-280」がおすすめ。
ソケットレール
このソケットレールは好きすぎて、もう10個以上は買いましたwww。
細かなところは抜きにしてとりあえず「カッコいい」の一言。
実用的なところで言うと、マグネット付きで場所を選ばずどこでも固定できるので非常に便利です。
そして一般的なソケットレールに比べて「節度感」がとても良いです。
レールの節度感とは、ソケットを固定するクリップとレールが触れているところの硬さですね。
一般的なレールだと、何度も使っていくうちにガバガバに緩くなっていき、レールを傾けただけでレンチが動くようになってきてしまいます。
コーケン ソケットレールの場合は、ここの節度感が絶妙に良い。
これは、実際に手にとってみないと分からないですが、特徴としては「硬すぎず、緩すぎない」絶妙な節度感があります。
なので、工具箱の横にあらゆる角度で固定したとしても、ソケットが変に動いてしまうことがないので安心なのと、ソケットを取り出すときに「どれだっけー」と選ぶ際に、硬すぎて動かしずらいというわけでもないです。
コーケンはこういった感覚的なところがよくできていると思ってます。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
オフセットエクステンション
こちらはZ-EALシリーズではありませんが、なかなか有益です。
通常のエクステンションバーと違って、先端が段つきになっており、首振り角度を15度までフレキシブルに動かすことのできるエクステンションバー。
さらに奥に挿入するとストレートタイプとして使用出来ます。
初心者には扱いにくく、高トルク向きではないにしろ、奥まったボルト・ナットにアクセスしたい時に「もう少し角度がついてくれたらなぁ」みたいな場面で活躍してくれます。
ユニバーサルジョイント一体式のソケットを持っていれば、それはそれでOKなので、変化球的な工具ではありますが、いちいち工具を付け替えるのも面倒。
なくてもいいかと言われれば、「んー」って感じですが、個人的には持っていて良かったと思える瞬間は結構ありました。
ナットグリップ
最後にご紹介するのが、コーケンの名作「ナットグリップ」です。
もうこれはねぇ…買っちゃって下さいw
めちゃめちゃ使えますよ。
名前の通り、このソケット内側にあるボールでボルトナットを保持してくれる事です。
これ使ってみるとかなり便利で、特に普段から長めのエクステンションバーを使っているユーザーさんに絶大な人気を誇ります。
ボルト取り外し時にボルトナットを落とさないのはもちろん、装着時にもセットしてから「ソォー」っと差し込んでいけるのはかなり重宝するんですよね。
実用的なところでいうと「インマニの奥にあるセンサーのボルトを取り出したい」みたいな緩めたのは良いものの、そのボルト落とさずに救出したい時に活躍します。
逆も然り、ボルトを落とさずにネジ穴にアクセスしたい時にも使えます。
なので「絶対にボルト・ナットを落としてはならない」場面ですね。
ナットグリップに助けられたメカニックも多数いるはず。
普段からガシガシ使うようなソケットではありませんが、ここぞという時に使える最終兵器的なソケット。
ぜひ1セット持っておくと良いですよ。
10年目にして分かったコーケンの魅力
10年間、メカニックとして働いてきましたが、改めてコーケンの魅力に驚いています。
なぜもっと早く知っておかなかったのかと。
筆者の周りには、「スナップオン信者」「マックツール信者」「ドイツ系工具信者」などなどいろんなこだわり系メカニックがいるのですが、言ってやりたいです。
国産工具ブランドがヤバいと。とくにコーケンが。
さらに価格もハイブランドの半分以下で手に入るアイテムも多いので、ほんと「なんで?」って感じです。
多くの国産ディーラーの支給用工具が「KTC」ばかりなのですが、筆者は「Z-EAL」を強く推していきたいです。
クルマに合わせて進化し続けるハンドツールがコーケンには揃っています。
最後に補足で、保証についてですが、他の多くのブランド同様、◯◯年保証ということは行っておりません。
ですが、工具の製造上に起因する不良に関しては原則無期限対応を行っているとのこと。
また、ラチェットハンドルなどの駆動系工具に関しては驚くほど多くのリペアパーツを用意しているので、ハンドル本体が折れるなどの致命的な破損でない限り、現行モデルであれば修理することが可能なので、半永久的に使えると考えてOKです。
今回は以上となります。
コーケン Z-EAL(ジール)の良さについて知りたい。