近年、自動車の性能の向上と共に快適性や静寂性の要求がますます強くなってきています。
その中でも古くからの問題でもある「ブレーキ鳴き」があります。

ブレーキ踏んだら、キーキーうるさいんだけど
ブレーキ鳴きが気になるんだけど、これって異常なんじゃないの?と不安になっている方はいませんか?この記事では、ブレーキ鳴きというのは様々な原理で鳴っているというコトを解説していきます。
私は、自動車整備士歴10年目です。国家資格を持っているので、他人の車を分解整備するコトができます。ブレーキのメンテナンスは数多くやってきた経験があります。
この記事を読むコトで「ブレーキ鳴きをするコトは全てが異常ではないというコト」「ブレーキ鳴きは様々な原理で起こっているというコト」こういったイメージができるようになります。
ブレーキのシステムとして、ディスクブレーキ、ドラムブレーキというものがありますが、今回はディスクブレーキをメインに解説しますね。
普通車であれば前輪と後輪がディスクブレーキというのが一般的。軽自動車であれば、前輪がディスクブレーキ、後輪がドラムブレーキが一般的です。ブレーキ鳴きの原因としては、ディスクブレーキから鳴るケースが多いです。
では見ていきましょう。
もくじ
ブレーキ鳴きの原理
ディスクブレーキとは
ブレーキ鳴きの原理を知るには、ディスクブレーキの基礎を知る必要があります。
まず、エンジンの回転は各シャフトに伝わり、ベアリングを介してローターもしくはブレーキディスクと呼ばれる回転する円盤に伝わります。その回転する円盤にブレーキパッドと呼ばれる摩擦材を押し付けます。摩擦材が円盤に押し付けられる時に、回転エネルギーが熱エネルギーに変換されて、回転が徐々に止まるという仕組みです。
ディスクブレーキの場合には、ブレーキディスクが外部にさらされているので、錆びやすいというデメリットがありますが、放熱性に優れています。ブレーキパッドには適温があるので、低すぎる温度も設定された効果が得られなくなります。
しかし放熱性に優れていることから、高いブレーキ性能を実現できます。
ブレーキ鳴きは、3種類ある。
ブレーキ鳴きは一般的に周波数によって次の3種類に分けられます。
•グー音 【90〜400Hz】
•キー音 【1〜4Hz】
•チー音 【4〜15Hz】
これらの鳴きは、ブレーキパッドとブレーキディスクとの摩擦により発生する摩擦振動が、ブレーキの部材の共振などによる増幅作用を受けて発生します。
これらの内、耳ざわりで運転手にとって一番不快感を与えるのは「キー音」です。
ブレーキ鳴き(キー音)の正体

3段階に分けて解説します。
ブレーキパッドが極度に磨耗:点検優先度★★★
ブレーキパッドが極度に摩耗してしまっているパターンです。ブレーキパッドは、身を削って摩擦を発生させているので、パッドは消耗していきます。ブレーキを使えば使うほど、ブレーキパッドは減ります。
ブレーキパッドが減ると、パッドウェアインジケーターというパーツ(ブレーキパッドの横についている)が、ブレーキディスクに当たります。その際にキー音が発生。この異音の場合には、構造上の問題ではなく、ブレーキパッドの残量がないというコトを運転手に知らせてくれる機能と言えます。(ブレーキパッド残量1mm以下)
走っていると常にキーキー鳴っています。
車検時はブレーキパッド1mm以下は不合格になります。(新品は7〜10mmぐらいです。車種によります)
摩擦面の振動:点検優先度★★
ブレーキパッドとディスクの摩擦面の振動が原因になっていることもあります。
パッドの残量が十分に残っていても、摩擦面から振動が生じて、振動の周波数によっては甲高いキー音になることがあります。振動は周辺のキャリパーやローターを通じて増幅し、耳障りなキー音に変化します。
ブレーキパッドとディスク表面間で摩擦振動(スティックスリップ現象)を起こし、ブレーキ全体を回転方向に継続的かつ不規則に加振します。
この場合は、
①ブレーキディスクの表面のサビ
→【対策】走っていく内にサビが取れていく
②ブレーキダストが溜まってきている
→【対策】ディスクブレーキの清掃(外車や社外品パッドはブレーキダスト多い)
③パッドとディスク間の摩擦面に異常
→【対策】表面研磨
④ディスクが磨耗して、パッドがディスクのエッジ部に当たってしまっている
→【対策】エッジ部の研磨をするか、ブレーキパッド&ディスク交換
たまにキー音が鳴ったり、走行中に擦れた音が鳴ったりします。
気温変化や洗車後のブレーキ鳴き:点検優先度★
通常ブレーキから異音が発生しやすいケースとして、寒い冬に車を乗り始めた際や洗車後のブレーキがあります。ブレーキは、ブレーキパッドとディスクローターという金属でできていますが、どちらも一定の弾性(柔らかさ)があります。しかし冬の寒い時にブレーキをかけると、固い金属同士が摩耗し、通常であれば吸収できる振動が異音となるケースがあるのです。
走行を進めて、ブレーキが暖まってくると異音が軽減します。
ブレーキキャリパーも見逃さないで
ブレーキキャリパーとは、ブレーキパッドをディスクに押し付けるためのピストンが圧入されているパーツです。
このピストンの内部にゴミが入らないようするダストブーツが破れていると、ピストン内部に水が入り、最悪固着します。
固着するとブレーキパッドをディスクに押し付ける動作に異常が起こり、キーキー鳴るパターンもあります。
こうなると走行中は常にキー音がなっています。走行中にブレーキが常に効いているような状況になるので、加速が悪かったり、燃費が悪くなったりするので注意しましょう。
対応としてはブレーキキャリパーの修理になります。
全て正常だが、たまにブレーキ鳴きがする
点検したが、上記全てが正常でも鳴る場合もあると思われます。
最終手段として、ブレーキパッド表面にブレーキ専用の鳴き止めグリスを塗る手段がありますが、
マジで、オススメしません!
ブレーキパッドとディスクの摩擦面にグリスを入れる訳ですから、当然ブレーキ能力は落ちますよね!
たまに鳴るようなブレーキ鳴きの為に、ブレーキ性能を犠牲にするのはかなり危険です!
過去にどうしても気になるのでなんとかして欲しい、という要望で作業した経験がありますが、ブレーキ鳴きは改善されましたが、ブレーキ性能は相当落ちました(保安基準ギリギリ)。
命の方が大切なのは当たり前の話なので、ブレーキ鳴きがたまに鳴ろうがプロが点検して良好なのであれば、心配するコトはないです。
まとめ
いかがでしょうか?この記事では、
①ディスクブレーキとは
②ブレーキには3種類の音がある
③キー音がなる状況は様々ある
④ブレーキ性能は犠牲にしないで欲しい
こういったテーマで解説しました。
ブレーキ鳴きをすると敏感な方であればすごく心配されると思います。
ブレーキ鳴きは、様々な状況でなりますので鳴れば異常という訳ではございません。
点検時に発行される記録簿はちゃんと読んでいますか?
ブレーキパッドの残量が記載されています。あなたの乗り方であれば、年間どれぐらいのスピードでブレーキパッドが磨耗しているのか把握できます。
そして、プロのアドバイスをしっかり受けましょう!
こんにちは。しーです。今回は、よくご指摘のある「ブレーキ鳴き」について解説していきます。