こういった不安にお答えします。
近年、クルマの性能の向上と共に快適性や静寂性に対するユーザーの要求がますます強くなってきています。
これは、スバル車に限ったことではありませんが、その中でも古くからの問題でもある「ブレーキ鳴き」があります。
あの「キー」という音は、とても不快ですよね。
純正に限って言えば、冬の寒い日や乗り始めてすぐの冷えている状態でブレーキを踏むと、キーキーと鳴くことがあります。
もちろん、これは異常ではありません。
ですが、ブレーキは命に関わる重要なパーツなので、快適性うんぬんの前に、「ブレーキから音がなっている」ということに対して、かなり不安に思われる人が多くいっらしゃることかと思います。
この記事では、自動車整備士10年目として働いてきたわたしが、ブレーキ鳴きについて解説しています。
ブレーキのシステムとして、ディスクブレーキ、ドラムブレーキというものがありますが、今回はディスクブレーキをメインに解説していきます。
スバル車はブレーキ鳴きがひどい?【結論:点検を受けてたら問題なし】
もくじ
スバル車はブレーキ鳴きがひどい?
「スバル車に乗りだしてからブレーキ鳴きが多い」というのは、別にスバル車が特殊なブレーキシステムを使っているわけではないので、別の要因があると思われます。
結論はタイトルの通りです。とくに「ディーラーで半年ごとに点検を受けている人」は、適切なアドバイスを受けらているはずので、ブレーキ鳴きがしたとしても焦らなくてOK。
われわれもブレーキはかなりシビアに点検していますのご安心して下さい。
スバルの半年点検
いやいや、スバルの半年点検(セーフティチェック)って、「ブレーキの効き具合」は診ても、ブレーキパッドの点検はないですよね?
とはいえ、セーフティチェックにはブレーキの点検項目がありませんが、しっかり見ている店がほとんどです。
いちいち点検項目を覚えている人は少ないですよね?
「スバルで点検受けてるのにブレーキパッドが少ないことも教えてくれないのか」とならないように、点検項目にはなくても重要な項目はしっかり点検するように心掛けています(全てのディーラーがそういうわけではない)。
もし不安なのであれば、オイル交換などの際に、「ブレーキパッドとディスクってまだ使えそうですかねー?」と一言聞いてみれば良いかもしれません。
対応の良いお店であれば、確認してくれると思いますよ。そんなに時間は掛からないので。
「ディスクブレーキ」を知る
「ブレーキ鳴き」を理解する前に、ディスクブレーキの基礎を知る必要があります。
まず、エンジンの回転は各シャフトに伝わり、ベアリングを介してローターもしくはブレーキディスクと呼ばれる回転する円盤に伝わります。
その回転する円盤にブレーキパッドと呼ばれる摩擦材を押し付けます。
摩擦材が円盤に押し付けられる時に、回転エネルギーが熱エネルギーに変換されて、回転が徐々に止まるという仕組みです。
ディスクブレーキの場合には、ブレーキディスクが外部にさらされているので、錆びやすいというデメリットがありますが、放熱性に優れています。
ブレーキパッドには適温があるので、低すぎる温度も設定された効果が得られなくなります。
しかし放熱性に優れていることから、高いブレーキ性能を実現できるのが特徴です。
3種類の「ブレーキの音」
ブレーキ鳴きは一般的に周波数によって次の3種類に分けられます。
- グー音 【90〜400Hz】
- キー音 【1〜4Hz】
- チー音 【4〜15Hz】
これらの鳴きは、ブレーキパッドとブレーキディスクとの摩擦により発生する摩擦振動が、ブレーキの部材の共振などによる増幅作用を受けて発生します。
これらの内、耳ざわりでドライバーにとって一番不快感を与えるのは「キー音」です。
ブレーキ鳴き(キー音)の正体
ブレーキ鳴き(キー音)の正体について、3段階に分けました。
- ブレーキパッドの磨耗
【★★★】 - 摩擦面の振動
【★★☆】 - 気温変化や洗車後
【★☆☆】
こんな感じ。
順番に解説します。
ブレーキパッドの磨耗【★★★】
ブレーキパッドが極度に摩耗してしまっているパターンで、もっとも危険な状態。
ブレーキパッドは、身を削って摩擦を発生させているので、パッドは消耗していきます。
ブレーキパッドが減ると、パッドウェアインジケーターというパーツ(ブレーキパッドの横についている)が、ブレーキディスクに当たります。
その際にキー音が発生。
この異音の場合には、構造上の問題ではなく、ブレーキパッドの残量がないということを運転手に知らせてくれる機能と言えます。(ブレーキパッド残量1mm以下)
ちなみに、車検時はブレーキパッド1mm以下は不合格になってしまうので、必ず覚えておきましょう。(新品は車種にもよりますが、7〜10mmぐらいです。)
走っていると常にキーキー鳴っていることと思います。
この状態になるまで走ると、当然ブレーキディスクの摩耗も考えられますので注意です。
摩擦面の振動【★★☆】
ブレーキパッドとディスクの摩擦面の振動が原因になっていることもあります。
パッドの残量が十分に残っていても、摩擦面から振動が生じて、振動の周波数によっては甲高いキー音になることがあります。
振動は周辺のキャリパーやローターを通じて増幅し、耳障りなキー音に変化します。
ブレーキパッドとディスク表面間で摩擦振動(スティックスリップ現象)を起こし、ブレーキ全体を回転方向に継続的かつ不規則に加振します。
この場合は、次のケースが考えられます。
- ブレーキディスクの表面のサビ
→【対策】走っていく内にサビが取れていく - ブレーキダストが溜まってきている
→【対策】ディスクブレーキの清掃(外車や社外品パッドはブレーキダスト多め) - パッドとディスク間の摩擦面に異常
→【対策】表面研磨 - ディスクが磨耗して、パッドがディスクのエッジ部に当たってしまっている
→【対策】エッジ部の研磨をするか、ブレーキパッド&ディスク交換
たまにキー音が鳴ったり、走行中に擦れた音が鳴ったりします。
これらは、安全上は問題ないですが、不快な音がずっと続くと精神的に不安になるので、心配な人は点検をオススメします。
気温変化や洗車後【★☆☆】
通常ブレーキから異音が発生しやすいケースとして、寒い冬に車を乗り始めた際や洗車後のブレーキがあります。
ブレーキは、ブレーキパッドとディスクローターという金属でできていますが、どちらも一定の弾性(柔らかさ)があります。
しかし冬の寒い時にブレーキをかけると、固い金属同士が摩耗し、通常であれば吸収できる振動が異音となるケースがあるのです。
これは、走行を進めて、ブレーキが暖まってくると異音が軽減します。
これは異常でもなんでもない、自然なことです。
【番外編】ブレーキキャリパーの異常
古いクルマの場合、ブレーキキャリパーの異常で、ブレーキ鳴きするケースもあります。
ブレーキキャリパーとは、ブレーキパッドをディスクに押し付けるためのピストンが圧入されているパーツなのですが、このピストンの内部にゴミが入らないようするダストブーツが破れていると、ピストン内部に水が入り、最悪固着します。
固着するとブレーキパッドをディスクに押し付ける動作に異常が起こり、キーキー鳴るパターンもありえます。
走行中にブレーキが常に効いているような状況になるので、加速が悪かったり、燃費が悪くなったりするので注意しましょう。
対応としてはブレーキキャリパーの修理になります。
【番外編】正常なのにブレーキ鳴きがする
点検したが、上記全てが正常でもしばしば発生するブレーキ鳴き。
そして、それは比較的よく知られたトラブルですが、原因や対策方法について意外によく知られていません。
また、調べようにもブレーキ鳴きに関する文献もほとんどなく、どうしようもないな状態だと思います。
ブレーキをかけるとパッドがピストンに押され、ディスクに接触。
そして、力強く、均一な圧力が得られればいいのですが、現実にはうまくいかず振動が発生するブレーキ鳴き。
このブレーキ鳴きは、以下3点で吸収されます。
- パッドの素材の柔らかさ(減衰特性)で吸収
- ディスクの柔らかさ(減衰特性)で吸収
- シムにより吸収
これら全ても正常で、ブレーキパッドもディスクも新品だった場合。
最終手段として、ブレーキパッド表面にブレーキ専用の鳴き止めグリスを塗る手段があります、
が、
オススメはしません!
ブレーキパッドとディスクの摩擦面にグリスを入れる訳ですから、当然ブレーキ能力は落ちます。
たまに鳴るようなブレーキ鳴きの為に、ブレーキ性能を犠牲にするのはかなり危険です!
過去にどうしても気になるのでなんとかして欲しい、という要望で作業した経験がありますが、ブレーキ鳴きは改善されましたが、ブレーキ性能は相当落ちました(保安基準ギリギリ)。
命の方が大切なのは当たり前の話なので、ブレーキ鳴きがたまに鳴ろうがプロが点検して良好なのであれば、心配することはないです。
「ブレーキ鳴き=異常」ではない
以上、ブレーキ鳴きについての解説でした。
最後にまとめです。
- 半年ごとに点検を受ければ問題なし
- 「キー音」がなる状況は様々ある
- 正常でもブレーキ鳴きはする
ブレーキ鳴きをすると敏感な方であればすごく心配されると思います。
ブレーキ鳴きは、様々な状況でなりますので鳴れば異常という訳ではございません。
点検時に発行される記録簿はちゃんと読んでいますか?
ブレーキパッドの残量が記載されています。
あなたの乗り方であれば、年間どれぐらいのスピードでブレーキパッドが磨耗しているのか把握しおくことも大切です。
スバル車に乗ってからブレーキ鳴きがひどい気がするのは気のせい?