車のトラブルでもっとも多いのが「バッテリー上がり」。
なぜバッテリー上がりのトラブルが多いかと言うと、「エンジンをかける」という行為は車を運転する際には毎度行いますし、バッテリーに負荷がかかるタイミングでもあるからですね。
JAFの調べによると、一般道路と高速道路での四輪・二輪合計の出動理由TOP3は、1位が「バッテリー上がり」となっており、劣化したバッテリーは突如、牙を向いてきます。
基本的にバッテリー上がりはロードサービスに依頼するのが一般的ですが、時間もないし、無駄なコストもかかってしまう…。
そこで助かるのが、ブースターケーブルです。
個人でも簡単に入手できますし、トランクに積んでおいてもそこまで邪魔にならないので、事前に備え付けておきましょう。
持っておくと自分の車だけじゃなくて、他人を助けることもできます。
そこでこの記事では、自動車整備士として働く筆者がおすすめする「ブースターケーブル」を厳選してみました。
もくじ
ブースターケーブルのおすすめを国家整備士が厳選!
そもそもブースターケーブルとは何でしょうか。
世にある多くのクルマは、スターターモーター(セル)によってエンジンを始動させます。
スターターモーターはバッテリーに蓄えられた電力によって動作する装置ですが、バッテリー上がり(電気容量の低下)など何らかの原因によりバッテリーの能力が低下していると、エンジンを始動させることができません。
こうしたトラブルの対処方法の1つとして、他の自動車から電力を分けてもらう方法(ジャンプスタート)があり、それに用いられるのがブースターケーブルです。
ブースターケーブルは、両側にワニグチのクリップが付いた2本1組セットの太いケーブルです。
配線の誤りを防止するため、+極用に赤色、-極用に黒色に塗り分けられています。
家電などの配線と比べてケーブルが太い理由は、エンジン始動時に大きな電流が流れるためにケーブルがそれに耐えるよう断面積が太く作られていることが理由になります。
エンジン始動時に流れる電流は、クルマによってさまざまなので、ブースターケーブルには流すことができる電流の許容最大値が記載されています。
ジャンプスタートは、バッテリーが上がってしまった車と同じ電圧の救援車が1台とブースターケーブルさえあればOK。
乗用車のほとんどは12Vですが、トラックや一部のSUVは24V仕様なのでご注意ください。
ここからはブースターケーブルの選び方について解説していきます。
ブースターケーブル「長さ」で選ぶ
必要なブースターケーブルの長さは、使用するクルマのバッテリーの位置を確認しておくとよいでしょう。
一般的なクルマの場合は、フロント側にエンジンルームがあるので、その左右どちらかにバッテリーが搭載されているはず。
この場合は3mのケーブルを選べば問題ないかなぁと思います。
ただ、これはバッテリーが上がった状況にもよります。
クルマを駐車している位置が悪かったりすると長さが足りない場合もあるので、その点を踏まえると少し長めのブースターケーブルの方が安心かもしれません。
ただケーブルが長すぎると電気抵抗が大きくなります。
例えば、高い場所にあるタンクに水を溜めて下に流したい場合、ホースが太く短いと水が勢いよく流れていきます。しかしホースが細かったり、長かったりすると、太く短いホースより水が流れる勢いが弱くなると思います。
ブースターケーブルもそれと同じで、なるべく配線は短いほうが適切な電圧を供給することができます。
何も考えずにケーブルの長さと価格だけを見てブースターケーブルを購入するよりかは、極力短いケーブルを選んだ方が良いです。
一般的に市販されているブースターケーブルは、3〜5mのものが多いです。
ただ経験上、「3mで届かなかった」という状況になったことがないので、もし迷われるのであれば3m〜5mのブースターケーブルで必要十分かと思われます。
ブースターケーブル「太さ」で選ぶ
これは先ほどお伝えした「ホースの水」と同じ考え方で、細すぎるケーブルより太いケーブルのほうが抵抗が少なく、電流を多く流せます。
ブースターケーブルの場合は、始動する一瞬だけの話なので、あまり意識しなくても良いかなぁとも思いますが、失敗はしたくないですよね。
ただ「太さ」と言われてもピンとこないと思いますので、電流量である「A(アンペア)」を意識しましょう。
エンジン始動に必要となる電流量はクルマによるので一概には言えません。
以下の表を参考にしましょう。
電流量(A:アンペア) | 排気量(cc) |
---|---|
50A | 660cc~1500cc |
80A | 660cc〜2500cc |
100A | 660cc〜大排気量 |
120A | ほぼ全車種 |
ブースターケーブルのパッケージなどにはケーブルの太さではなく、流すことのできる電流量(A:アンペア)の最大値が表示されていますので参考にしましょう。
迷った時は120Aのブースターケーブルを購入しておけば間違いありません。
ブースターケーブル「クリップの大きさ」で選ぶ
ブースターケーブルの先端には、ワニ口のクリップになっており、通電するために金属でできています。
これ以外と見落としがちなのですが、サイズを無視して購入すると「クリップが小さすぎてバッテリー端子を掴めない」というパターンに陥ります。
バッテリー端子のサイズは、車種・排気量によってバラバラ。
今乗っているクルマが軽自動車で、それに合わせたクリップ形状のブースターケーブルを購入してしまうと、故障車が乗用車の場合に救援できない可能性があります。
なので、クリップ形状は大きめなものをおすすめします。
これ、私の身近でも起こったことがあります。「救援しにきたのに端子が掴めないじゃん!」っていう(笑)。
ブースターケーブルのおすすめ 3 選
ブースターケーブルは様々なメーカーが販売しているため、購入する際に迷うことが多いと思います。
「とりあえずこれでいいや」となりがちなブースターケーブルですが、メーカーや商品によって特徴が異なってくるため、マイカーにあっているものを選ぶようにするのがポイントです。
おすすめ1:BAL ブースターケーブル
メーカー | 大橋産業 |
容量 | 50~200A ← 選べる |
長さ | 3~5m ← 選べる |
価格(アマゾン) | 1,655円(100A/5m) |
BAL/大橋産業は、昭和31年創業のクルマ用工具・用品販売メーカーで、バッテリー充電器やインバーターなど、「あれば何かと役立つアイテム」を販売されているのが特徴です。
BALのブースターケーブルのポイントは、容量と長さのラインナップが豊富なところです。
6種類から選べます。
トランクの収納性、ブースターケーブルの作業性を考えて、ご自身に合った容量と長さを選びましょう。
種類 | 価格 |
---|---|
50A/3m | 900円 |
80A/3.5m | 980円 |
100A/3.5m | 1,136円 |
100A/5m | 1,655円 |
120A/5m | 3,000円 |
200A/5m | 7,700円 |
あと、ブースターケーブルを使うときに心配になるのが「使い方」です。
さらに「電気」に関わるようなところなので恐怖感もあります。
BALのブースターケーブルには、初心者にも分かりやすいように、取り付け手順がタグ付けされています。
使い方が分からなくても番号通りに進めるだけでOK。
BALのブースターケーブルは、軽自動車から大型トラックまで幅広く対応でき、すべてに使う手順がタグ付けされています。
はじめての方や不慣れな方にかなりおすすめのブースターケーブルです。
おすすめ2:メルテック ブースターケーブル
メーカー | メルテック(大自工業) |
容量 | 100A |
長さ | 7m |
価格(アマゾン) | 2,555円 |
メルテックというメーカーは、クルマや車両運搬車の周辺アイテムを手がけている会社で、バッテリー周り、ガソリン周りなどあらゆる商品のラインナップがある大手メーカーです。
メルテックのブースターケーブルの特徴は、BALと同じで種類も多く、なんと7mまでラインナップがあります。
乗用車全般、ワンボックス車に対して、縦列駐車でも対応可能になります。
ケーブルの品質ですが、外形直径10mm心線面積11.6㎟と充分太いケーブルながら、しなやかで扱いやすく、両端のワニ口クリップも大型で、全面銅メッキが均一に施されていてしっかりした造り。
クリップハンドルはしっかりとカシメられた上で半田付けされており、確実に接続されています。
国内で企画・開発されており、作りが輸入物のブースターケーブルよりは確実に丁寧です。
少々値段が高くても、品質を重視されたい人はかなりおすすめですよ。
おすすめ3:UNICORN ブースターケーブル
メーカー | UNICORN |
容量 | 1500A |
長さ | 6m |
価格(アマゾン) | 3,680円 |
UNICORNは、太くて安全性、耐久性に優れているブースターケーブルが特徴です。
ケーブルには、耐久性や耐熱性に優れている塩化ビニール素材を採用しているため、車内に放置していても劣化する心配が少ないです。
クリップ部は、しっかり覆ってくれる絶縁カバー付きなので安心して使用可能。
容量は、なんと1500Aまで対応。
しかも6mという長さなので、ブースターケーブルでも最強クラス。
いかなるシチュエーション、いかなる車種、これ1本持っておけば間違いないかと。
ブースターケーブルはあくまで「応急」
紹介したブースターケーブルの中でもとくにおすすめなのは、BAL/大橋産業ですね。
国産ブランドの安心感とラインナップの豊富さで、あらゆるクルマに対応できます。
わたしが仕事で関わってきたユーザーさんでもBALのブースターケーブルを常備されている人が多かったですし、やはり人気のアイテムには安心感がありますよね。
ブースターケーブルの使用は、基本的にはプロに依頼する作業がほとんどですが、もしもの備えに購入を考えてみてはいかがでしょうか。
とはいえ、「ブースターケーブルを常備しているからバッテリーの点検なんてしなくていいや」とならないように。
バッテリー上がりを起こしてしまい、交通の邪魔になって他人に迷惑をかけてしまう場面もあるからです。
あくまで応急的なアイテムです。
日頃のメンテナンスは確実に行うようにしましょう。
救援車が必要ないジャンプスターターもあり
ジャンプスターターとは、バッテリー上がりなどの急なトラブル時に急用携帯型のバッテリーです。
ブースターケーブルのように他のクルマのバッテリーと繋げて救援するのではなく、ケーブルとは別に専用のバッテリーを搭載しているものです。
使用方法は簡単で、ジャンプスターターの赤ケーブルのクリップをバッテリーの赤色端子に、黒ケーブルをのクリップを黒色端子に繋いでエンジンをかけるだけ。
ブースターケーブルと違って扱いやすさ、携帯性が高く、そして最近ではモバイルバッテリーとしても使えるのでクルマには1つ常備はしておきたい優れもの。
オートマ車の場合は、バッテリーが上がると自力でエンジン始動することができないため、ブースターケーブルなどを使ってほかの車から電気を送ってエンジン始動するしかありません。
万が一に備えてジャンプスターターを車載しておくことで、JAFや他車に頼らず自力でエンジン始動することができます。