こういった疑問にお答えします。
コーケン(工研)こと「株式会社山下工業研究所」は、商品カテゴリーをラチェット・ソケットに絞り込み、ターゲットもオートモーティブを強く意識した駆動系工具専業メーカーです。
国内の工具メーカーでは「KTC」が非常に有名ですが、コーケンは世界的にブランド力があり、「コーケンといえばソケットレンチ」と言われるほど、駆動系工具には絶大な信頼を置かれています。
さらにコーケンでは、より自動車整備を意識したコンパクト設計のジール「Z-EAL(ジール)」というシリーズをラインナップしています。
近年、自動車は複雑になってきており自動車工具も時代に合わせて進化しなければいけません。
自動車が複雑になってくると狭いところでの作業が増えてきますから、そういった作業環境にも対応できる工具として2010年にジールシリーズが誕生しました。
そんな確固たるコンセプトがあるジールシリーズの中には、
スタンダードラチェット【3725Z】があります。
コーケンのラチェットは、「空転トルク」が軽くて、作業スピードが求められる現場のメカニックたちの大きな味方になってきました。
この記事では、コーケンの中でも近年ラインナップされたジールシリーズの中にあるラチェット【3725Z】に焦点を当てて、レビュー&解説していきます。
【神】コーケン ジールのラチェット【3725Z】のレビュー|最初の一本に
【神】コーケン ジールのラチェット【3725Z】のレビュー
さっそく結論ですが、コスパも良く、そして扱いやすい、最初の一本にぜひ購入して頂きたいラチェットになっています。
コーケン ジールシリーズのスタンダード工具として位置付けされている【3725Z】。
開発コンセプトは「コンパクトでフレッシュなデザイン」。
上質ないぶし銀のクローム仕上げとブラックのグリップがめちゃカッコいいです。
ラチェット中央には【Koken 3725Z】と裏側には【MADE IN JAPAN】とさりげなく刻印されています。
2020年12月には、マイナーチェンジでギヤ歯数が36枚→72枚に仕様変更されており、今までの最高レベルの「コンパクト設計」と「空転トルクの軽さ」はそのままに、最近では当たり前になった多ギヤ化がされ、価格はそれまでとほぼ据え置きになっています。
正直ここまで最高なラチェットはないと思えるほどです。
ちなみにスペックはこちらの通りです。
メーカー | コーケン |
品番 | 3725Z |
差し込み角 | 3/8 |
ギヤ歯数 | 72枚 |
振り角 | 5° |
推奨最大トルク | 不明 |
特徴をさらにまとめるとこんな感じ。
- 作業の最初から最後までラチェットが機能する空転トルクの軽さ
- エラストマーグリップが握りやすい&耐久性が良好
- ヘッドが他メーカーよりコンパクト
- 切り替えレバーが少し残念
それでは順番に解説していきます。
【メリット】空転トルクが軽い
これは、コーケンの最大の特徴であり、メーカーもとてもこだわりが強いところです。
空転トルクとは、ラチェットレンチを戻すときの重さ(トルク)です。
ラチェットを戻す時の「カリカリ」の軽さのこと。
空転トルクが重い場合、ボルトを締め付けてハンドルを戻すときに空回りするはずのラチェットが空回りせずボルトも一緒に戻ってしまい締めては戻っての繰り返しで締め付けるスピードが遅くなってしまいます。
2020年のマイナーチェンジの前まで、【3725Z】は36枚ギヤを採用していましたが、これにはコーケンの強いこだわりがありました。
いやいや、次世代の工具なのに、ひと昔前の36枚ギヤのラチェットって矛盾してない?
そういった疑問もあるかと思いますが、ファクトリーギアのブログでコーケンの営業マンである森田さんという方が語っています。
「当時主流の72枚ギアではなく小判型の36枚にしたのは、耐久性の面でやはり小判型のほうがいいのではないか? という見解からです。50Nmで1分間に30回を5万回という耐久テストの結果がその根拠となっています。多ギアは半掛かりになったときにトラブルが起こりやすいのですが、これを避けるためにスプリング強度を上げると空転トルクが高くなってしまう。空転の軽さにはこだわりたかったです」
出典:ファクトリーギア
なるほど。
でも、36枚ギアでは物足りなさを感じますが…。
「実は多ギアで半掛かりを避けるギアの構造にすると今までのコーケンの切り替えレバーと向きが変わってしまうんですね。それでは既存のユーザーが指で覚えていた、締め緩めのレバーの方向感覚を変えてしまうことになる。あえて多ギアではなく36枚にしたのは、長くコーケンのラチェットを使っていただいているユーザーの感覚を変えたくないというのも大きな理由なのです」
出典:ファクトリーギア
多ギアラチェットは振り角が小さくて、いかにも狭い場所で使えそうなイメージですが、空転トルクの軽さも早回しには重要な要素。
36枚ギアのデメリットを空転トルクの軽快さで補って、さらにコーケンファンの感覚も大事にしている。さすがです。
これが今までの【3725Z】なのですが、2020年のマイナーチェンジからは、これからの時代に合わせて72枚ギヤに変更がなされました。
ラチェット機構の仕組みが変更され、多ギヤ化されることで、さらに「空転トルク」が軽くなっており、この分野ではもはや敵なしなんじゃないかなと思います。
【メリット】握りやすい
ラチェットってハンドルのグリップが使っていく内に、
スポスポ抜けてしまわないか不安ですよね。
オイルやグリスが付着しても大丈夫かなー。
グリップには上質な握り心地と磨耗/油脂類に対する耐性を兼ね備えたエラストマー樹脂をハンドル本体に直接インジェクション成型。酷使によるグリップの抜けや空回りといったトラブルを防止します。
出典:コーケン公式
エラストマーとは、耐水性、耐摩耗性、耐油性を兼ね備えた吸い付くような手触りが特徴の素材です。
インジェクション成形とは、成形技術の中ではもっとも精密性が高く、微細なものから機器のカバーなどのようなものまで、短時間で大量生産が可能であるため、あらゆる身の回りの物が射出成形による製品として作られています。
グリップ部本体にエラストマーを直接インジェクション成型されているので安心して使えそうです。
不意にグリップが抜けてしまうとケガをしてしまいますからね。
【メリット】ヘッドがコンパクト
ラチェットヘッド部がコンパクトです。
ここはメリットしか感じませんね。
他のラチェットに比べても明らかにヘッド部がコンパクト。
ジールシリーズのコンセプトをしっかり踏襲しています。
ラチェットヘッド部に「丸」がありますが、プッシュキャンセル機構ではありません。
【残念?】切り替えレバー
少し不安な点をあえて言うと、切り替えレバーが樹脂?素材なところとレバーが少し軽めなので不意に切り替わってしまうところです。
狭いところで切り替える時は、重すぎると不便なので少し軽いぐらいの方がちょうどいいかなーとは思いますが、実際に使って見ると、たまに回転方向が勝手に変わってしまい、イライラすることもありました。
あとは、樹脂っぽい素材だと耐久性に少し不安が残ります。
このラチェットは使い初めて1年も経っていないので、果たしてどれぐらい持つのかはわかりませんが、現時点では何も不具合はありません。
ハイクオリティなのに高コスパ
個人的にお気に入りのラチェットなのですが、
このクオリティなのに価格がリーズナブルなんです。
希望小売価格は、6,950円なのですが、アマゾンではなんと4,173円なんです!
ヤバくないですか?
ちなみにこれは、KTCのラチェット 【BR3E】とほぼ変わりません。
わたしが過去に書いた、KTCのラチェット【BR3E】の辛口レビューも一緒に見ていただけたらお分かりだとご理解いただけると思いますが、あなたならどちらを購入しますか?
KTCのラチェットより安くてハイクオリティなこのラチェットは優秀すぎる。
(【BR3E】が性能の割に高すぎるだけな気もしますが…。)
わたしがもし、これからラチェットを買うのであれば、間違いなくコーケン ジールのラチェット【3725Z】を買いますね。
ベタ褒めすぎて怪しいかもしれませんが、現状のラチェットでは、このジールシリーズが「価格」と「性能」のバランスがもっとも良いので、友人がもし「今から整備を趣味にしたいんだけど」と聞いてきたら、絶対に買わせると思いますw
コーケン ジールのラチェット【3725Z】について、現役メカニック視点で見たレビュー記事が見てみたい。