昔から「スバルと言えば4WD(四駆)」と言われるほど、4WDにこだわりがあるのがスバルです。
スバルでは4WDではなく、AWD(オール・ホイール・ドライブ)と呼んでいます。
(この記事ではわかりやすいように4WDで説明します)
それをスバルのお家芸的な存在でもある「水平対向エンジン」と組み合わせた「シンメトリカルAWD」を開発し、今日までのスバルを支えてきました。
スバルの4WD=シンメトリカルAWDではなく、水平対向エンジンと組み合わせることで完成されたレイアウトです。
スバルの普通車では、OEM車を除いて、すべて車種でシンメトリカルAWDを採用しています。
4WDとは、エンジンによって回転するタイヤが4つあるクルマのことです。
つまり、2輪駆動との大きな違いは、「エンジンによって回転するタイヤの数」の違い。
雪道や山道など、一般的に「悪路」と呼ばれる環境を走行する機会が多い人は、安定しない路面でもタイヤが4本とも駆動する4WDが有利。
現在はアウトドアブームの後押しもあってか、どの自動車メーカーもSUVに注力していることもあって、「4WD」はこれまで以上に身近な存在になってきました。
では、スバルの4WDって何が良いのか…。
そこでこの記事では、今では世界でも認められる存在となったスバルの独自技術「シンメトリカルAWD」を、スバリストである筆者が初心者でも分かりやすく丁寧に解説します。
もくじ
SUVブームで身近になった!?「AWD」の歴史
なんとなくかっこよさを感じてしまうクルマ用語のひとつ、「4WD(四駆)」。
現在どの自動車メーカーもSUVに注力していることもあって、これまで以上に身近な存在になってきています。
歴史を見ると、4WDの開発が大きく進んだのは、第二次世界大戦前後のこと。
悪路での走破性の高い4WDは軍用車両として最適であったため研究開発が進められます。
4WDの代表的存在でもあるほど有名なアメリカの「ジープ社」は、「ウィリス MB」として1941年には本格量産が開始され、日本では1936年に国内初の4WD「九五式小型乗用車」通称・くろがね四起の量産が始まります。
こちらもそれまで二輪車やサイドカーで行っていた偵察・連絡用途に重宝されたそうです。
現代的な乗用車の4WDが花開くのは1960年代のこと。
1962年には「カイザー・ジープ社」による「ワゴニア」が登場し、1966年にはイギリスの「ジェンセン社」からスポーティな3ドアクーペの「ジェンセンFF」が登場するなどしています。
カイザージープ社のワゴニアは、先代モデルのステーションワゴン譲りのワゴン風ボディと余裕のある地上高、前輪独立懸架を用意するなど乗り心地と操縦性が追求され、上質な仕立ての車内を持つなど、現代でいう「SUVスタイル」がここで確立されます。
軍用車両から乗用車まで、世界の各地で発展した4WDは、ついに国内でも開発されます。現在の株式会社SUBARUの全身である「富士重工業」が国内で初めて一般向けの4WD(四駆)を開発しました。
きっかけは「東北電力からの依頼」
「山にある送電線の保守作業をしなければならない。そのためスバルのFFを四輪にできないか」
1968年、富士重工のディーラー、宮城スバルにある依頼が寄せられます。
頼んできたのは東北電力.。
新車の開発ではなく、4WDに改造してほしいとのこと。
宮城スバルにとって、東北電力は得意先。
できるかぎり要望に応えなくてはならなかったそう。
「やってみようじゃないか」
当時の宮城スバル整備課長はポジティブでした。
彼はもともと自衛隊で戦車の整備をしていた男。
本社に改造について報告することなく、ディーラーの整備担当を集めて、持っている知識と技術をもとにFF車から4WDへの改造に着手します。
FFとは、クルマの前にエンジンがあり、前輪のタイヤ2本が駆動する方式。
宮城スバルの整備課の人たちは、FF車を4WDにするためにジープを参考にします。
そしてFF車のスバル・1000バンをベースに、独自に4WD化した車両を試作。
しかし、最初の試みは大失敗。
手作りの4WDの機構を組み込んでみたら、前輪と後輪が逆回転して、車体が引きちぎれそうになったそうです。
その後も苦労を重ね、彼らはなんとか頑張り、やっとできた1台の試作車を富士重工の本社に持ち込みます。
「走行性能はまあまあの仕上がりになっていたが、とにかくうるさかった」
本社のスバル技術本部が直接、車体設計、サスペンションなどをすべて見直しされ、東北電力の要望によりFFから4WDに改造されたこのバンが、国産初となる「ワゴンボディの乗用車タイプ4WD」となります。
レオーネからレガシィ、そしてレヴォーグに引き継がれていく、スバルの「AWDのルーツ」となった瞬間です。
試作車は8台作られ、うち5台が東北電力に、残り3台は長野県白馬村役場、長野県飯山農業協同組合、そして防衛庁に納車されたそうです。
試作車を納車するのは時代を感じますw
4WDが認知されなかった不遇の時代
スバル1000、スバル1300は販売面では、大きな成果を残すことができなかったので、1971年には新型車「レオーネ」が発売されます。
そこで4WDの改造を担当した技術開発陣は、スバル1300Gからレオーネをプラットフォームにしたものに変え、72年には「スバルレオーネ4WDエステートバン」を完成、市販することに。
しかし、販売面ではパッとしませんでした。
今では「乗用の4WD」はありますし、なんならジープという存在がある。
- 「どうして4WDが必要なのか」
- 「ジープとはどこが違うのか」
- 「得をする点はどこにあるのか」
モータージャーナリスト、自動車評論家、他社の技術者からの評判は最高でしたが、国内では4WDがまだ認知されておらず、最初のうちは苦戦を強いられます。
世の中の風向きが変わったのは1980年のこと。
ジュネーヴのモーターショーで、「アウディ」が「クアトロ」と名づけたスタイリッシュなフルタイム4WDを発表。
クアトロが出る以前のアウディに乗る人々は、ジープを買う層とはまったく異なる人たち。
おしゃれな富裕層というのがアウディのイメージでした。
アウディはそういった顧客層に向けて、「うちが出した乗用の4WDはジープとはまったく違うクルマだ」とアピールします。
悪路を走破するのが目的ではなく、都会をハイパワーで走るスポーツカーだ
アウディは全世界にこう訴えました。
つまり、都会の道路でスピード感を楽しめ、なんなら悪路も走れる、しかも乗り心地のいい車として4WDを定義。
クアトロという新しい定義のクルマに真っ先に反応したのは欧米の富裕層。
それまで富裕層が買うクルマといえば、ロールス・ロイス、ベントレー、メルセデス、もしくはフェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニなどの高級スポーツカーでした。
ところがクアトロはそのどちらでもない、新しいジャンルの富裕層向け乗用車として話題となり、それは日本でも話題となります。
そして、国内の4WDにとって追い風となったのは1990年代のスキー人口の増加で、「クアトロが欲しいけれど、手が届かない」という人たちを狙い、レオーネの4WDはアウディのイメージに引っ張られて売れていくことになります。
WRCで世界で魅せた「シンメトリカルAWD」
スバルは、ラリーの最高峰であるWRC(世界ラリー選手権)で輝かしい成績をおさめ、全世界にその独自の技術を見せつけます。
WRCとは、交通が遮断された一般道を市販車ベースのマシンで走り、タイムを競うタイムアタック競技のこと。舗装路、未舗装路、スノーなど様々なコンディションの道で行われ、ラリーごとにコースのキャラクターは大きく異なります。
1980年代、低重心、コンパクト、シンプルでありながら、安定性に優れる、水平対向エンジン+4WDという世界でも珍しいパッケージングに、スバルはその将来性を見出していました。
1980年代からレオーネでWRCに参戦、1990年からは初代レガシィRSで本格参戦を始め、1993年から初代インプレッサWRXを投入。
スバル伝統の4WDシステムこと「シンメトリカルAWD」で、2リッターの水平対向4気筒ターボエンジン+フルタイム4WDシステムを、レガシィよりふたまわりほど小さい4ドアセダンボディに積んだこのマシンで、翌1994年には3勝を挙げます。
1995年には5勝し、スバルは本格参戦開始から6年目にしてメイクス、ドライバーズ(コリン・マクレー)のダブルタイトルに。
1996年にメイクスタイトルを連覇した後、1997年はベースマシンを2ドアクーペに変更してメイクスを3連覇。
メイクスタイトルの3連覇は、これまでのところ日本車メーカーではスバルのみ。
この功績は、WRCの歴史と人々の脳裏に刻み込まれています。
スバルはWRCを通じて得た技術や教訓の数々を、余すところなく市販車へとフィードバックしていきました。
このWRCでの功績は「技術の証明」となり、今まで見向きもされなかったスバルは世界各地に「スバリスト」を着実に増やしていきました。
その後、インプレッサWRXは伝説となり、今日までのスバルのレーシングマシンにその技術が受け継がれてきました。
シンメトリカルAWDのメリット
スバル自慢の水平対向エンジンに、スバルが初めてAWDを組み合わせたのは、初めて水平対向エンジンを搭載した「スバル1000」の後継車「レオーネ」。
約50年前の1972年のことです。
その後、数々の改良が加えられ、現代でも優れた性能をもつ「シンメトリカルAWD」が完成します。
ここからはシンメトリカルAWDのメリットについて解説します。
雪国でも強い!「悪路走破性」と「高速安定性」
一般的なフロント横置きのエンジン車は、トランスミッションをエンジンの右か左の同軸上へ配置するので、左右輪の軸重を厳密に合わることができません。
レイアウトが左右対称ではないため、排気量が大きいエンジンにおいては重量バランスが悪くなります。
人間の足で例えると、左右で微妙に足の長さが違ったらバランスが悪いですよね。
さらにエンジンやトランスミッションが前のタイヤより前に集中しているため、排気量が大きいエンジンにおいてはフロントが重くなり、ハンドリングが悪くなる傾向があります。
そのため、クルマが跳ね上げられると、左右のタイヤの動きに差が生じやすくなります。
それに比べてシンメトリカルAWDは、左右均一のレイアウトで4つのタイヤにバランスよく荷重がかけやすいため、車体が揺れにくく、安定したタイヤ接地性を確保することが可能。
これにより、4WDのポテンシャルを最大限に発揮でき、雪路など悪路での高い走破性、さらに雨天時や高速道路でも安定した走りが可能になります。
雪国に訪れるとよくスバル車を見かける理由がわかりますね。
軽快!優れたハンドリング性能
エンジンが縦置きレイアウトとなるので、重量のあるトランスミッションが、車体の重心近くに配置されます。
エンジンからトランスミッション〜ドライブシャフト〜タイヤまで、ボデイー下に一直線にレイアウトできるので比較的左右のバランスが良い。
フロントタイヤの軸上にエンジンとトランスミッションがくるFF車と比べれば、慣性モーメント(回るために必要な力)が小さくなるため、コーナリング時やブレーキ時に軽快なハンドリングを楽しむことができます。
スバルは操舵初期の応答性をとくに重要視しています。
そこからサスペンションのストロークにつなげてくる連動性。
ここのリズム感が良いのか。
そのリズムをドライバーの意思でコントロールできるのか。
シンメトリカルAWDのレイアウトは、優れたハンドリング性能をドライバーにうまく提供してくれるレイアウトです。
優れた重量バランスと駆動力の分散
前輪駆動車と後輪駆動車は、構造的にエンジンパワーを前輪あるいは後輪のどちらか一方で受け止めるため、タイヤのグリップ限界を超えやすくなります(ホイールスピンしやすい)。
その点、シンメトリカルAWDは、エンジンパワーをタイヤ全てに分散できる4WD性能と、優れた重量バランスによるコントロール性能を合わせ持っています。
なので、ホイールスピンによるトラクションロス(トルクがかからない)を減らし、余すことなくトラクションを路面へ伝え、より気持ちよくコントロールしてクルマを走らせられるというわけです。
シンメトリカルAWDのデメリット
性能は理想と言える「シンメトリカルAWD」ですが、必ずしもパーフェクトなシステムではなく、メリットの裏には必ずデメリットがあります。
ここからはシンメトリカルAWDのデメリットについて解説します。
大幅な改良ができないレイアウト
シンメトリカルAWDを構成する水平対向エンジンは、全長が短くて、車両の低い位置に搭載できるとはいえ、エンジンの横幅は広くなる。
そしてそれは、サスペンションレイアウトへの影響が出てしまいます。
近年では精密な電子制御により、あらゆる路面状況が変化する中での高速走行安定性や、快適で安全に走行するためのシステムへと成熟しています。
ですが、水平対向エンジンと4WDシステムをパッケージングしているがゆえに、大幅な改良ができない。
また、衝突安全性能に対する思想が強いメーカーなので、車体の構造や、エンジンの搭載方法を簡単に変更することができない。
シンメトリカルAWDに固執しているスバルにとって、新たなレイアウトを開発しようと思うと莫大なコストがかかってしまいます。
燃費規制で絶滅するかもしれない
スバルといえば「走りはいいけど燃費が悪い」というイメージを持つ人も少なくないかもしれません。
実際には、同じジャンルの4WD車で比較すると、燃費も決して悪くありません。
やや落ちる程度です。
ただ、販売するクルマの90%以上が4WDなので、メーカー全体の平均値としては燃費が悪いということになり、今後の燃費規制にどう対応するかが課題になります。
また、それ以外のメーカーでは、電気モーター駆動システムを追加することで4WD化、あるいは4輪とも電気モーター駆動の4WDシステムを搭載するクルマが増えており、これまでの4WDの弱点を低減。
レイアウト変更ができない容易ではないシンメトリカルAWDにとって、時代に合った改良ができるのか。
水平対向エンジンありきのシステムですから、水平対向エンジンが無くれば、スバルの4WDシステムも絶滅してしまう可能性がありえます。
【4種類+α】シンメトリカルAWDの「特徴」
シンメトリカルAWDとは、スバルこだわりの水平対向エンジンとトランスミッションからリアデフに至るまでを、一直線上に配置し、シンメトリカル(左右対称)の重量配分となるようにした4WDシステムです。
フルタイム4WDで、常時4輪にトルク配分しており、オンロード性能にも優れる本格的な4WDです。
スバルは、低重心かつ理想的な重量配分をもたらすこのシステムによる恩恵を最大の強みと考えています。
水平対向エンジンとAWDを縦置きにした左右対称のシンメトリカルレイアウトは、低重心で前後左右の重量バランス が良く運動性能に優れています。
そんなシンメトリカルAWDの中でも、大きく分けて4種類のAWDシステムがあり、それぞれ特徴があります。
ビスカスLSD付きセンターデフ式AWD
採用車種 |
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旧フォレスター 旧インプレッサ |
スバルのマニュアルトランスミッション車専用に設定されたAWDシステムです。
センターデフにより、通常時のトルク配分を「前 50:後 50」 に設定し、トラクションを最大限活用した走りを実現します。
センターデフとは、前後輪を駆動する4WDの場合、前後が直結されていると乾燥路面でハンドルを切った場合に回転差を吸収する装置
前輪または後輪がスリップし、トラクションのバランスが崩れるような状況になった場合は、ビスカスLSDが前後のトルク配分を最適に制御します。
マニュアルトランスミッションを活かし、常に最適なトラクションを活かすスポーティなドライビングを求めるドライバーの意志に忠実に反応します。
- 通常走行時はセンターデフでトルク配分を「50:50」に設定
- 前輪や後輪がスリップしそうになった場合、前後のトルクを最適に分配。
- シンメトリカルAWDをMT車で思いどりに引き出す
純粋に機械的でシンプルな構造で耐久性に優れており、整備性も良いです。
スバルのWRX STIを除く、全マニュアル車に使われています。
DCCD方式AWD
採用車種 |
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WRX STI |
一般のMT車に採用されている「ビスカスLSD付センターデフ方式」に対し、センターデフ構造として、「機械式+電子制御のLSD(差動制限機構)」を採用しています。
前後輪への駆動力配分を、「前 41:後 59」に設定し、これに加えて全域を電子制御する差動制限機構を採用することで、差動制限の俊敏な応答性と、カーブでのスムーズな回頭性を実現しています。
さらに4つの御御モードにより、路面状況やドライビングスタイルに合わせたトルク制御を選択可能とし、走りをサポートします。
モードの切り替えは、センターコンソールのスイッチで行えます。
モード | 特徴 |
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[AUTO]モード① | コーナー進入時にはスムーズに、コーナー後半ではトラクションを高める |
[AUTO ー (マイナス)]モード② | AUTOモードに対してセンターデフの差動制限を弱めて回頭性をもたらす |
[AUTO +(プラス)]モード③ | AUTOモードに対してセンターデフの差動制限を強めて高いトラクションを確保 |
マニュアルモード モード④ | 電子制御LSDの差動制限をロックからフリーまで6段階で任意に設定できる |
DCCD方式には、回頭性とトラクションのバランスを取った「AUTO」モード、前後輪の差動制限トルクが低めで回頭性重視の「AUTO-」モード、前後輪の差動制限トルクが高めでトラクション重視の「AUTO+」モード、電子制御LSDの差動制限トルクをロックからフリーまで6段階で設定できる「MANUAL」モードの4種類が用意されています。
前後のトルク配分を自在に制御できるのがメリット。さらに効き具合を任意でコントロールできることが上級ドライバーからも評価されています。
アクティブトルクスプリットAWD(ACT-4)
採用車種 |
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レヴォーグ フォレスター インプレッサ スバルXV アウトバック |
アクティブトルクスプリットAWD は、コンピューターが走行状態の変化を予測して、エンジンからの駆動力を最適な比率で前後輪に配分するAWDです。
通常、「前輪 60:後輪 40」のトルク配分を基本に、前後輪のグリップ変化や車速などクルマの状況を常にセンサーで感知。
エンジンの力を無駄なく路面に伝え、安全性をさらに高めたAWDです。
電子制御 MP-T(Multi Plate Transfer:多板クラッチ)が、走行状態に応じリアルタイムに前後輪のトルク配分をコントロールすることで、AWDの安全性と軽快な走りをより高めます。
突然の雨や雪というような路面の変化
コンピューターで MP-T をコントロール
駆動トルク配分をほぼ (前 100:後 0)〜(前 50:後 50) の間で調整
路面に合わせて素早くトルク配分することで安全性を確保
前後輪にトルクをどのくらい配分するかは、この方式を採用するメーカーによって異なります。
スバルでは、いかなる時も常に4輪で駆動し路面を捉えるという考え方です。
常時4輪で路面を捉えていれば車体が安定し最も安全(=安心)だとスバルは考えているからです。
他社は、通常は2WDで走行していて前後輪に回転速度差が出たとき、すなわち駆動輪が空転したときに4WDにする方式が多くを占めている中、スバルはレオーネ(1981年)の時代からこれを採用しており、実に40年以上のノウハウが詰まった伝統のAWDシステムです。
VTD-AWD
採用車種 |
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レヴォーグ WRX S4 |
VTD-AWDは、シンメトリカルAWDの持つ基本的な走行安定性能はそのままに、より回頭性を向上させ、積極的なスポーツ走行に応えるAT車専用のAWD システムです。
VTD(バリアブル・トルク・ディストリビューション)は、専用方式のセンターデフを採用したシステムで、基本的に前後のトルク配分を「前輪 45:後輪 55」 に不均等に配分しています。
軽快なハンドリングを持つ 「FR車」の利点である後輪へのトルク配分を強めることにより、アンダーステアを低減させ、スポーティ且つ安定感のあるハンドリングを実現しています。
また、路面状況に応じてトルク配分を最適にコントロール。
最大「50:50」の前後イーブンなトルク配分を自動的に行うことで、あらゆる路面状況下において、スポーティな走りと安定性を実現しています。
フルタイムAWDの走行安定性
基本思想はFR車
前後トルク配分は、「前 45:後 55」
発進時や濡れた路面ではトルク配分を「前 50::後50」 にまで自動的に制御。
AT 車でもクルマを意のままに操る愉しさを味わえる
適切なトルク配分によって、旋回時のスムーズなハンドリングを実現し、また、走行状況に応じてトルク配分を連続可変するので、直進時にも安定した走行ができます。
VTD-AWD は、1991年に「アルシオーネ SVX」 に初めて搭載され、当時としては非常に画期的なシステムでした。
X-MODE
採用車種 |
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スバル XV フォレスター アウトバック |
シンメトリカルAWDの持つ高い基本性能をベースに、悪路走破性を高める機能が「X-MODE」です。
滑りやすい路面でタイヤが空転、スリップして立ち往生してしまいそうな場面で、エンジン制御、AWD制御、VDC制御などを最適に統合制御し、四輪の駆動力やブレーキなどをコントロールすることでスムーズに脱出できます。
運転スキルに関わらず、様々な道を安心して走ることができます。
なお、制御するためには 0〜20km/hの速度域内でスイッチを押します。作動する領域は時速 0〜40km/h までの車速域です。(作動車速域は一部機能によっては変わります)
2018 年発売の新型フォレスターより新たに「SNOW・DIRT」と「D・SNOW・MUD」の 2 つのモードを設定。
路面状況に合わせてモードを簡単に切り替えられるようになりました。
X-MODEがONの時、難しいブレーキペダルのコントロールをしなくても一定速度で坂を下りることができる「ヒルディセントコントロール機能」も搭載。
濡れた下り坂や雪道などでは、アクセルワークとブレーキコントロールであたふたすることなく、安全に走行することが可能。
また、ヒルディセントコントロール作動中にアクセルやブレーキペダルの操作を行っても制御領域の時速 20km/h 以下であれば制御は解除されません。
アメリカの大地に負けない「タフネスな性能」
2019年、アメリカ国内で累計販売台数1000万台を達成し、ライバル社と差別化した技術力で、熱心なファン層を開拓してきました。
その功績の中には、アメリカの広大な大地を走り抜けれるポテンシャルを持った「シンメトリカルAWD」の存在は大きいです。
スバルは元々、航空機の製造・開発を目的として設立された会社でした。
そこで培われた技術が自動車にも応用され、シンメトリカルAWDといった優れた4WDシステムを開発することに成功したのです。
現在は、EVの開発や安全性能技術に力を注いでいるスバル。
今後もどのような活躍を見せてくれるのか、期待が高まります。
スバルの4WD(四駆)システムである「シンメトリカルAWD」って何が優れているの?各メーカーの4WD(四駆)とスバルは何が違うの?