2021年9月10日に北米仕様が発表された新型WRX。
新型WRXでとくに注目されたのがオーバーフェンダーでしたよね。
なぜ注目されたのかといえば、WRXに装着されたオーバーフェンダーが、ボディ同色ではない、艶消しブラックの樹脂製フェンダーだったからです。
さっそくネット上では「安っぽい、ダサい、なんちゃってSUV」など、ネガティブなワードが飛び交いました。
SUVではよく見る樹脂フェンダーが、なぜWRXの新型に付いているのか。
単なるデザインなのか。
それとも意味があるのか。
この記事では新型WRXに装備された樹脂フェンダーの意味について解説します。
もくじ
新型WRXはダサい!?樹脂フェンダーの本当の意味
黒いフェンダーのルーツは、2017年の東京モーターショーでした。
スバルはコンセプトカー「SUBARU VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」を出展します。
「VIZIV」はクルマづくりの将来ビジョンを示すスバルのコンセプトシリーズ
このコンセプトカーを具現化したいとの想いに実を結んだのが、新型WRX(VB系)。
コンセプトカーは写真でもご覧いただける通り、フェンダーを含めたクルマのボディ下部が黒い。
これは「カーボン」を使っているという表現でしたが、量産車でカーボンを使うのはコストがかかります。
そこで新型WRXでは、ボディ下部に樹脂パーツを採用することにします。
新型WRXのデザインについてネット上の意見
発表と同時に賛否両論を生んだツイッターでの意見をご紹介します。
ポジティブな意見
新型WRX S4、話題の樹脂製別色フェンダー、否定派は結構いらっしゃいますね。
— スバルネットマン。 (@subarunetman) June 1, 2022
私は大絶賛です。ボディ下部をブラック一周、精悍で力漲る感出てて格好良いと思います。セダンでは今までにない感じ。
普通のSUVと違い、空力操縦安定パーツなのもストイックなWRXの新しいカタチを表現してくれました。
新型WRXのフェンダー散々言われてるけどウチは結構好きよ←
— 白咲きのLycoris (@LycorisKSFOUR) September 10, 2021
…ただ欲を言えばカラードにしてくれたらなと()
どうせ実車は買わないんだろうけど、もし某Fに収録されたら塗装出来ない未来しか見えないからなぁ←そっちかよ?
新型WRX S4の賛否両論の無塗装フェンダーアーチ。
— karikari-kun81818 (@blueguitar84) November 25, 2021
実際に見た感じ個人的には全然アリです。新鮮。
イグニッションレッドがすんごい鮮やかで良い色。 pic.twitter.com/5FAC9cE9HH
ポジティブな意見としては、「無骨なデザイン」「ボディを覆うブラックパーツが力強い」という声が見られました。
全体をブラックパーツで一周覆うことで、さらにボディの鮮やかさが際立つのも印象的ですね。
ネガティブな意見
新型WRX
— まむるん (@mamuru_zc33s) January 16, 2022
樹脂フェンダーキモすぎる
アウトバックの間違いですか?
新型WRX走ってた!
— ケン (@ken223srapid) October 29, 2022
やっぱり見た目SUV感あって個人的には好きになれんなぁ…
新型WRX発表されましたが、フェンダーのSUVみたいなの要らない😅これは車高下げるより、今流行りの車高上げのカスタムを意識したんですかね🤣リアも新型BRZ.86に良く似てますね。あのリアが個人の意見ですが、好きになれません😭
— 頭文字S (@TRD86_TE37SL) September 10, 2021
ワイは気づいてしまった
— I LOVE STI 低浮上 (@STIperformance1) August 18, 2021
新型WRXのフェンダーボディ同色だったら結構エロい説
ネガティブな意見としては、「SUVみたい」「車高が高く見える」「ボディと同色だったら…」という意見が多かったです。
参考までにPROVAさんがネガティブな意見を払拭した、デモカープロトタイプを完成しています。
同色した時のイメージとして参考にしてみて下さい。
PROVAさんの新型WRX S4のデモカープロトタイプ、たいへん好印象でした!✨✨✨✨✨✨
— マリオ髙野 🔥🔥東毛のブランドが前人未到のGT300クラス2連覇するのは2024年🔥🔥 (@takano_mario) May 10, 2022
フェンダーのシボを活かしながらのカラーリングなど、ビジュアルはすでに超絶レベル✨ 完成するのが楽しみです!✨ 真夏頃かな!?✨ https://t.co/6nKsSu1Urp pic.twitter.com/biPu5nE7If
新型WRXのデザインコンセプト
ネット上では賛否が大きく分かれた新型WRXのデザイン。
スバルでは以下の3つを表現しています。
- 乗員を守る塊感のあるデザイン
- 内にみなぎるパワーを感じさせるデザイン
- 走りへの期待を高める前傾姿勢
フェンダーデザインに関しては、②のコンセプトに基づいて開発され、「内側にみなぎるパワーが外側へ隆起した造形」を表現しています。
フェンダーデザインと空力テクスチャー
特徴的なフェンダーデザインですが、実は機能的な要素が織り込まれており、意味のないパーツではありません。
スバルでは新型レヴォーグ以降、デザイン部だけでなく、設計・実験・航空宇宙部門との連携を強化しており、機能面と両立したデザインを意識しています。
ここからは、新型WRXのフェンダーに織り込まれた機能「空力テクスチャー」について解説します。
乱流を活用し、空気の剥離を抑える
空気抵抗の1つは、表面から空気が剥離することで大きな渦を発生することが要因となっています。
そこでスバルでは、表面の凹凸で小さな乱流を起こすことで流れの剥離を抑制し、空気の流れのテクスチャーが作れないかと考えます。
方向性としては、ゴルフボールの凹みの整流効果を活用。
ゴルフボールの表面が凹凸になっているのはご存知でしょうか。
あれはティンプルと呼ばれており、空気渦の発生を防ぎ、整流効果を生み出すことでボールの飛距離が増すそうです。
スバルでは、ゴルフボールの飛ぶ速度域とクルマの速度域が近いという点も参考になると考え、さまざまなゴルフボールの柄や凹みを研究します。
ヘキサゴンパターンによる風洞・実走試験
ボディの柄として使用しやすく、角度やサイズなど複数案が検討され、新型WRXのフェンダーにはヘキサゴンパターンを採用します。
ヘキサゴンパターンとは、表面に六角形を敷き詰めたような、いわゆるハニカム模様の処理です。
スバルが公表している風洞試験機による試験と実走試験での結果は以下の通りです。
風洞試験(風速20m/s) | 実走試験 | |
---|---|---|
空力テクスチャーなし | 基準 | 基準 |
空力テクスチャーあり | 空力剥離点がフェンダー後方へ | 直進安定性強化 バネ上の減衰感強化 |
北米市場に向けた製品開発を行うスバルにとって「ロングドライブでの直進安定性」は重要なカテゴリーです。
空力テクスチャーによる技術は、今後も積極的に採用されるのではないでしょうか。
ちなみにヘキサゴンパターンの凹凸の深さは45ミクロンとなっています。
凹凸が深いと効果は高まりますが、これ以上の深さにするとボディコーティングしたときなどに埋まってしまい、効果が発揮できなくなるおそれがあるので45ミクロンに決められました。
塗装してしまうとほぼ効果は得られなくなるので注意です。
まとめ
個性的なデザインの新型WRX(VB系)のフェンダーデザインと空力テクスチャーについて解説しました。
個性的な新型WRXのフェンダーデザインはネット上で賛否が分かれましたが、単なるデザインでは終わらないところが「さすが技術屋気質のメーカーだな」と思わされますね(褒め言葉)。
ちなみに空力テクスチャーは、新型BRZ(ZD系)のフロントバンパーダクトにも織り込まれており、今後は各車種にもこの技術が生かされていくことでしょう(BRZは鮫肌パターン)。
新型WRXの樹脂フェンダーって「なんちゃってSUV」みたいでダサいような…。