【整備士解説】バッテリーの点検・交換時期の把握をできるだけ自分で行う方法|もっとも効果的な点検方法と便利アイテムを解説

バッテリーの点検を自分でする方法を知りたい…

このような疑問にお答えします。

この記事で分かること
  • バッテリーの点検をする自分でする方法
  • バッテリーの点検に便利なアイテム

バッテリーといえば「だんだん弱くなってきてエンジンのかかりが悪くなる」というイメージをお持ちの人が多いかと思いますが、現在のバッテリーは技術の進歩もあって、ギリギリまで性能を維持して突然死ぬという現象を起こします(バッテリーの突然死)。

とくに、ちょい乗りが多い・1週間に1度しか乗らない人は、たとえ整備工場などの6ヶ月おきの定期点検を受けていたとしてもバッテリー上がりの危険は格段に上がります。

とはいえ、「バッテリーの点検を自分でするのはハードルが高くない?」とか感じられる人が多いかと思います。

本業は自動車整備士のわたしですが、バッテリー関連のトラブルは年々増えてきているように感じます。

個人でも日常的にバッテリーの点検ができるようになれば、こういったトラブルも減ってくると考えています。

そこでこの記事では、個人レベルでできるバッテリーの点検方法をご紹介します。

バッテリーの点検を自分で行う方法

バッテリーの点検は5つのステップを踏んで総合的に状態を把握しましょう。

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エンジンのかかり具合

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バッテリー液は足りているか

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バッテリーのにごりで極版の劣化がないか

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バッテリー液の比重で充電状態を把握

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CCA・始動時電圧の測定

1:まずはエンジンのかかり具合から

プッシュエンジンスタートスイッチ押す(もしくはキーを回す)とエンジンがかかりますが、エンジンがかかる直前までにエンジンルームから「キュルンキュルン」と音をたてますよね。

あれはバッテリーの電源を利用し、エンジンを始動させるキッカケを作るための装置「スターターモーター」が駆動している音。

スターターモーターは、エンジンとミッションの間にある大きなリングギアを回すので大きな電流が必要となってきます。

しー

バッテリーが劣化すると、スターターモーターに規定の電流が流れづらくなるので、正しく駆動しません。

今ままで「キュルンキュルンキュルン→ブーン(エンジンの音)」だったのが、バッテリーが劣化すると「キュ…ルン…キュ…ルン…キュ…ルン…ブーン」といった感じで、始動までの時間が伸びていきます。

ポイントとしては「スターターモーターの動きが遅くなってきているかそうでないのか」で、バッテリー関連なのか、はたまたそれ以外の故障なのかの切り分けができます。

「エンジンのかかり具合が悪い」というのはたくさんの原因が考えられますが、上記のような症状だと、大半はバッテリーの可能性が高いです。

2:バッテリーの液量は足りているのか

バッテリー内に充填されているバッテリー液には適正量があり、不足している場合はバッテリーで蓄電できる容量が低下します。

しー

これは、通常バッテリー液に浸っているはずの電極板がむき出しになることで劣化してしまうためです。

バッテリー液が不足するとバッテリーの容量低下、最悪の場合バッテリー内での化学反応により発生したガスが原因で爆発し火災が発生する危険性があります。

定期点検を怠ってきた車両でバッテリーから白煙がでた事例は何度も見てきました。

バッテリー液は、充電・放電を繰り返していくと、自然蒸発とともに、充電時の電気分解によって減少していきますので注意が必要です。

バッテリー液量の点検方法は、バッテリー本体にある「UPPER LEVEL(最高液面線)とLOWER LEVEL(最低液面線)」の間にあるかどうかで判断します。

スマホのライトを使って点検すると良いです。

減っている場合は補充しましょう。

バッテリーの種類の中には、液量の点検が必要ない「メンテナンスフリーバッテリー」もありますので、その場合は点検不要です。

3:バッテリー液の比重で充電状態を把握

比重を測ることでバッテリーの充電状態を把握することができます。

バッテリー液の比重とは、水とバッテリー液の重さの相対的な比を表し、バッテリー液の比重は通常完全充電時で1.28。

これは温度によっても変わり、温度が高いほど比重は低く、温度が低ければ高くなります。

参考までに、以下は比重と放電量との関係になります。

比重(液温20°)放電量(%)良否判定
1.28〜1.220〜30%良好
1.21〜1.1531〜60%充電または交換
1.14〜1.0861〜100%要交換

比重計の選び方ですが、大きく分けてアナログタイプとデジタルタイプに分かれます。

アナログタイプは、スポイトでバッテリー液を吸い上げて、目盛りで測るシンプルなタイプ。 デジタルタイプは、アナログに対して価格は高くなりますが、バッテリー液の充電状態以外にも冷却水の凍結温度などが測定できるものもあります。

使いやすさとコスパで言うと、圧倒的にアナログタイプが良いです。

比重計なんて滅多に使わないですから、安いもので良いです。エーモン製の比重計は安価ですし、ケース付きなので安全に保管できる点が◎

また、比重計がなくてもバッテリー端子電圧で比重を把握する方法があります。

比重 = [ 0.187× バッテリーの端子電圧 (V)] −1.1

比重計が用意できない場合は活用して下さい。

ただしリアルな数値を把握するなら比重計を使うべきです。

4:バッテリー液のにごりで極版の劣化がないか

バッテリーの内部の極板は鉛を使っています。

化学反応できる面積を多くするために何層にもなっており、内部の極板の数が多いほど性能が高くなるので、極板以外のモノ、つまりセパレータを薄くしたりして多く極板を入れているものもあります。

同じサイズでも性能に違いがあるのはこのためです。

ただし、バッテリー液(電解液)は硫酸なので、極版もいずれはボロボロになってしまいます。

これはバッテリー液のにごりで判断できます。

バッテリー液に何か物体が浮かび上がっている状態が見られたら要交換です。

5:バッテリーテスターでCCA・始動時電圧の測定

CCAとは、コールドクランキングアンペアー(Cold Cranking Ampere)の略称で、そのバッテリーにエンジンを始動させる能力がどれだけあるかを示す性能基準値です。

バッテリーの性能が低下するにつれて、CCAの実測値も低下します。

劣化バッテリーのCCA値を測定すれば、そのバッテリーが何%くらい劣化しているかを計算することができます。

実測CCA値 ÷ 基準CCA値 × 100 = 劣化%。

市販されているバッテリーテスターの中でも「CCA」が測れるものはバッテリーの点検に有効です。

まとめ

今回ご紹介した点検方法、アイテムを駆使すれば個人でもバッテリーの状況は把握できます。

ただし、もっと深いところまで調べようと思うと、プロの道具には敵いません。

当たり前ですよね。プロなんですから。

とはいえ、この記事で紹介した方法ができたらかなり優秀な方なんじゃないかなと思います。

液量が見れて、比重が見れて、バッテリーテスターで電圧、CCAまで見れたら、必要最低限の点検はほぼ完了していますので。

突然のバッテリー上がりを防ぐためにも、バッテリーの点検は密に行っていきましょう。

今回は以上です。

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