このような疑問について解説します。
- レギュラーとハイオクの違い
- レギュラー車にハイオクの効果
本記事では、レギュラー仕様車にハイオクを入れた場合に起こるエンジンへの影響について解説します。
結論は以下の通りです。
レギュラー車に ハイオクの効果 | ・出力向上は期待できない ・エンジン内部汚れていると効果はある(かも) ・エンジン内部の洗浄効果は期待できない |
※本記事の内容はあくまで筆者の私見です。
※補足等あればコメント欄にお願い致します。
もくじ
【基礎知識】レギュラーとハイオクの違い
レギュラーとハイオクの違いを以下にまとめました。
レギュラー | ハイオク | |
---|---|---|
オクタン価 | 89.0以上 | 96.0以上 |
沸点 | 20℃~200℃ | 20℃~200℃ |
引火点 | -40℃以下 | -40℃以下 |
主成分 | 炭化水素 | 炭化水素 |
ハイオクの正式な名称は「ハイオクタンガソリン」で、レギュラーガソリンとの大きな違いはオクタン価の違いにあります。
1:オクタン価について
オクタン価 | |
---|---|
レギュラー | 89.0以上 |
ハイオク | 96.0以上 |
このオクタン価の数値は、ガソリンのエンジン内での自己着火のしにくさ、つまりノッキングの起こりにくさを示す数値で、オクタン価が高いほどノッキングが起こりにくいということになります。
2:ノッキングについて
ノッキングとは、異常燃焼とそれに伴う音や振動を総称して「ノッキング」と言います。
ガソリンエンジンは空気とガソリンを混ぜたもの(以下:混合気)を吸入し、吸い込んだ混合気を圧縮し、点火プラグで着火して燃焼させ、その時に発生する燃焼ガスの圧力でピストンを押し下げる事でパワーを発揮します。
ところで、物質を圧縮すると物理法則に従って熱を持ちます。
もちろん混合気も同じで、圧縮すればするほど高温になっていきます。
その熱が混合気の発火点を超えると……、点火プラグで火種を飛ばさなくても単なる圧縮熱だけで自然発火してしまうのです。
これはエンジンの設計した点火タイミングではないので異常燃焼。
圧縮している途中で勝手に着火して膨張開始してしまうのでエンジンの円滑な回転を妨げてしまい、大幅にパワーダウンします。
カリカリカリカリ!といった音と共にガクガクと振動が発生しているのは、ノッキングの症状です。
これは異常燃焼しているので、異常な高温・高圧によってスパークプラグやエンジンを損傷させてしまう場合があります。
3:ノッキングが発生しやすい条件(余談)
代表的なものを下記にまとめました。
高負荷条件が継続的である | 燃焼室内温度が高くなるから |
エンジンの冷却が不十分 | 燃焼室壁面温度が高いから |
燃焼室壁面にデポジット(炭素塊)がある | ホットスポット(発火源)になるから |
燃焼室内の空気が多い | 燃料の気化エネルギーによる燃焼室内温度低下が少なため、燃焼室内温度が高くなるから |
点火時期が早い | 圧縮比が高い状態に近くなるから |
ノックセンサーの故障 | ノック制御ができないから |
このように、あらゆる条件下でノッキングが発生します。
ではこのノッキングとどう向き合えば良いのか。
現在の車では、エンジン出力・燃費とノッキングとのバランスを取るために、ノックコントロールシステムが採用されています。
4:ノックコントロールシステムの役割(余談)
ノックコントロールとは、いかにノッキング発生を押さえて最大のトルクを引き出すかがポイントになります。
ノックコントロールシステムは、エンジンに設置したノックセンサーからの高周波出力がエンジンコントロールユニット内のROMに書き込まれた設定値を超えると、ノック発生と判定し、センサー出力に応じた量の点火タイミング遅角が行われます。
また、設定された時間にセンサー出力が無い場合は、ノック発生なしと判定し、自動的に進角し、トルクが増大します。
このシステムにおいて必要不可欠となるのがノッキングを検知することであり、ノックセンサはノッキングによって発生した振動を圧電素子(圧電セラミックス)で検知し、電気信号としてエンジンコントロールユニットに伝えます。
ノッキングの頻度によって、点火時期を調整する制御がノックコントロールシステムになります。
ではこのシステムがある限り「ハイオク車にレギュラーを入れても大丈夫ってこと?」という疑問が出てきますが、車種によってはECUにレギュラー使用を想定したマップを備えていたります。
5:ハイオクが存在する理由
圧縮熱で自然発火してしまうノッキングですが、残念な事にエンジンというのは混合気を圧縮すればするほどパワーが出るものです。
もともとエンジンというのは爆発的な燃焼で発生したガスでピストンを下げてパワーを出すもの。
これはつまり「混合気は圧縮すればするほど良い」という事を意味しています。
そうなると大きな矛盾が発生します。
パワーが欲しい → 圧縮比を上げたい → 自然着火(異常燃焼)してしまう
ここで必要になるガソリンが「自己着火しにくい=オクタン価が高いガソリン=ハイオクタンガソリン」です。
まとめると以下の通りです。
- 高出力の為には大きな爆発力が欲しい
- 大きな爆発力を得るには高い圧縮が必要
- 高圧縮にすると自然着火(異常燃焼)しやすく、ノッキングを起こす
- それを防止するにはノッキングしにくいハイオクが必要
つまりハイオクというのは、「高圧縮でもノッキングを防げるガソリン」ということです。
もっと言うと「点火した後、この火炎が届く前に勝手に燃え出す(=自己着火)のがノッキング現象であり、これを抑えるのがハイオク」です。
レギュラー車にハイオクを入れた場合の影響
1:出力の向上は体感できない
両者の低位発熱量の違いは数%であるため、体感できるほどの出力向上は見込めません。
低位発熱量 | |
---|---|
レギュラー | 44.1MJ/kg |
ハイオク | 44.5MJ/kg |
ちなみにレギュラーガソリンとハイオクガソリンの違いは単にオクタン価なわけですが、ネットでは「ハイオクガソリンは燃え難い」と言う話が良く聞かれます。
そもそも、ハイオクガソリンが燃えにくいと言うのは、オクタン価が高い事で、自己着火し難い、だから燃えにくいと言う安易な考え方から来ていると思うんですが、自己着火と燃えにくさと言うのはちょっと違います。
自己着火はあくまで発火のしやすさであって、その後の燃え方には影響しないからです。
2:エンジン内部が汚れている状態だと効果あり?
出力向上は見込めないが、汚れる前の状態に近づけることはできます。
エンジン内部、特にインテークバルブはデポジット(炭素塊)が付きやすくなっています。
デポジットがあると、そこがノッキングの原因となり、ノッキング頻度が増えやすくなります。
ノッキングはノックセンサーで検出し、ノッキング頻度が増えてくると、点火するタイミングを遅らせます(ノックリタード)。
点火するタイミングが本来の上死点位置より遅くなるほど、圧縮比が低い状態で燃焼しているのと同じことになります。
このため、ノックリタードされると、ノッキングを回避できます。
しかし圧縮比が低い状態と同じになるため、エンジンの出力および効率は低下します。
レギュラーからハイオクに切り換えると、このノッキングを回避しやすくなり、点火するタイミングを早めることができます。
とはいえ、これはエンジンが汚れる前の状態に近づいただけで、新品のエンジンの出力・効率を向上できるわけではありません。
3:エンジン内部の洗浄効果は期待できない
合成清浄剤によってデポジット除去の期待はあるが、一般的な使用条件ではまず効果は期待できないでしょう。
ハイオクには、合成清浄剤を添加しており、カーボンの汚れなどがエンジン吸気系に付着しづらくなっています。
しかし「以前はレギュラーガソリンを使っていて、その後ハイオクに切り換えた」というケースだと、いったん付着したデポジットをキレイにする力はありません。
よく石油会社のサイトにデポジットが落ちた写真がありますが、これは特殊な条件での使用であり、一般的な使用条件ではまず効果は期待できません。
まとめ
レギュラーと ハイオクの違い | ・ノッキングの起こりにくさの違い |
ノッキングとは | ・点火した後、この火炎が届く前に勝手に燃え出す(=自己着火)現象 |
レギュラー車に ハイオクの効果 | ・出力向上は期待できない ・エンジン内部汚れていると効果はある(かも) ・エンジン内部の洗浄効果は期待できない |
あくまで筆者の私見なので、異論は認めます。
レギュラーガソリン仕様車に「ハイオクを入れると良いよ」と聞いたことがあるが、実際どうなのでしょうか?むしろ指定されていない燃料を入れると壊れるんじゃないかと…。