こういった疑問にお答えします。
WRXとはインプレッサベースのフラッグシップモデルとして1992年に誕生します。
WRC(世界ラリー選手権)やニュルブルクリンク24時間耐久レースなど、世界トップクラスの競技で勝つために生まれた車です。
1990年からスバルはWRCに「レガシィRS」で本格的な参戦を開始し、1993年のニュージーランドラリーでは優勝。スバルにとって初の優勝を成し遂げました。
1993年のラリーから投入されたインプレッサWRX。
1997年、全14戦で行われたWRCにおいて8勝を挙げ、スバルは日本車メーカーとしては初となる3年連続(1995~1997年)でタイトルを獲得し、全世界にスバルファンを拡大させました。
今では定番カラーである「ブルー」。なぜこのときブルーを採用したのかは定かではないですが、WRCに参戦していた時代の競技車両のカラーリングとしてブルーが用いられたコトで、「WRブルー」がイメージカラーとなりました。
海外でもかなりの人気で、特にアメリカでは各映画にでも出てくるほど高い人気を誇っています(ワイルドスピードなど)。アメリカにおけるスバルファンは、「Subie」と呼ばれていたりします。
2010年のマイナーチェンジを機に、「スバル インプレッサWRX」から「スバルWRX」と「インプレッサ」の名前が外され、「WRX」という車種として独立します。

WRXというクルマは、スバルにとってモータースポーツを支えてきた特別な存在です。
この記事では、スバリスト12年、正規ディーラーで10年間スバルに携わってきたわたしが、WRX S4とSTIの違いについて徹底解説します。
WRX S4とSTIの違いとは【現役社員が徹底解説】
もくじ
WRX S4とSTIの違い
さっそくですがこちらのツイートをご覧ください。
VABに劣等感抱いてる人とか、
— keñtaro (@kentaronuevo) August 22, 2020
少ないけどVAGを下に見るVAB乗りの人いるけど、
マニュアルって世の中のクルマの1〜2%しかいないからVABの方が特集な趣味ですよもはやw
38%しかマニュアル免許持ってないから世の中の大半の人からしたらわざわざシフト操作してるの意味不明よw
WRX S4に乗ってますがSUBARUの集まりに行くと、VAB乗りに見下される事があるんですよね、ほとんどの方は関係無く暖かく接してくれるんですが、MTってそんなに偉いですか、、?
— 稲@WRX (@178yuuta) August 22, 2020
もうずっと前から思ってるけど、VAGで満足せずVAB買って良かったと言う意味が理解できない。
— 二乃推しの朝里@4/4 KANATA豊田城 (@asato_178) March 2, 2021
全然性格違う車じゃん😕
もしかしてマウント取りたいのかな(
「WRXなのにオートマとかダセェ。」
「どうせ乗るならマニュアルだろ。」
こういった声って聞いたことありませんか?
結論ですが、使用目的が全く別のクルマです。オートマだからダサいとかハイパワーが偉いとか意味がわかりませんので、そういった人は無視してOK。
車にせよバイクにせよ、趣味にはこういった論争ってあるんですよね。
私から言わせれば全く別の車であり、使用目的が違います。
簡単ではありますが、違いを以下にまとめました。
- レヴォーグよりコーナリング性能を重視したセダン
- 高級セダンと走りのセダンのバランスが良い
- 安全装備が充実
- AT免許で乗れる
- MTモードがあるので、スポーツ走行も楽しめる
スバルの安全装備をフル活用しつつ、かつての走りのセダンであった「レガシィ B4」のような乗り方をしたい人。
- アイサイトなし
- 足回りは硬め。乗り心地はS4より悪い。(後期型は少し改善)
- 純正パーツが高いので、コスパ悪め
- スポーツ性能はハイパフォーマンス
- MT免許が必要
安全装備よりスポーツ性能を重視し、インプレッサWRXの伝統を味わいたい人。
こんな感じ。
それではここからは、さらに歴史を振り返りつつ、さらに深掘りしていきます。
【2014年〜】初代 WRX S4 (VAG)

2014年に日本に投入されたスバルの”走りのセダン”が「WRX」シリーズ。「WRX S4」は控えめなエクステリア、そしてスポーツグレードのWRX STIの存在から、ちょっとおとなしめなクルマと思われがちですが、走りのポテンシャルはかなり高いんです。
インプレッサから独立し、WRXの車名をもらったこのシリーズですが、「WRX S4」に関しては、往年のレガシィターボの実質後継モデルを思わせるスペックとなっております。
レガシィシリーズは高級路線にシフトし、スバルの”走りのセダン”はWRXにすべてを託されます。
全長×全幅×全高 | 4595×1795×1475mm |
ホイールベース | 2650mm |
エンジン | 水平対向4気筒 2L 直噴ターボ(FA20) |
圧縮比 | 10.6 |
最高出力 | 300ps/5600rpm |
ミッション | 8速マニュアルモード付CVT(TR690) |
アイサイト | ○ |
そのWRX S4に搭載されるエンジンは2L直噴ターボで、最高出力は300馬力、最大トルクは40.8kgm。これにハイトルクリニアトロニックと呼ばれるCVT(TR690)が組み合わされます。パワフルなエンジンにCVTのイージーさが加わった「WRX S4」は、じつにスムーズでスポーティな走りを実現しています。
有り余るトルクとアイサイトをはじめとした運転支援システムと組み合わせ、高速道路を余裕で流せる感覚は贅沢なものです。
ちなみにS4の意味は、「Sports performance(運動性能)」、「Safety performance(安全性能)」、「Smart driving(環境性能)」、「Sophisticated feel(洗練された質感)」の4つの頭文字を掛け合わせたものです。Sで始まる4つの性能をまとめたものです。
スバルの「安心と愉しさ」がバランス良く組み合わさった、まさに「スバルの器用な優等生」なんです。
レヴォーグのセダン版?ではない

プラットフォームは、インプレッサ→レヴォーグをベースにしており、レヴォーグ(2.0Lモデル)のセダン版と思ったら分かりやすいかなと思います。
先ほどプラットフォームはレヴォーグと共通と書きましたが、ボディ形状の違いによる剛性の出し方、ねじれに対するフレームの追従性など、レヴォーグと細かい点での変更はあります。
最大の違いはコーナリング性能です。主に、足回りの設定が異なるといわれており、これらの電子制御もS4専用です。当然SIドライブも同じマッピング、同じ制御というわけではないです。
レヴォーグでもスポーツセダン並みの運動性能を誇っていますが、WRX S4に乗ればセダンならではの次元の高いコーナリング性能が体験できます。レヴォーグは、高速ツーリングワゴンとして直進性能に寄ったチューニングを施しているそうですが、WRXではコーナリング特性も考慮したワインディングでも楽しいチューニングとなっています。
インプレッサWRXのDNAがしっかりと継承されており、見た目はレヴォーグと似ていますが、しっかりと差別化されています。
世界的に見ても珍しいクルマ

「WRX S4」に本格的なスポーツカーほど尖った性能は必要ありませんが、その気になればしっかりとパフォーマンスを楽しむことに興味を持つユーザーをターゲットとしています。しかも、アイサイトを装備していて400万円台ちょっとで手に入る価格帯は非常に魅力的です。しかもアイサイトの安全性は世界的に見てもトップクラス。
この価格帯でこれほど高い性能を持つ本格的なスポーツセダンというのはそうそうありませんし、その性能をオートマで手軽に楽しめるようにしたところが「WRX S4」の最大のポイント。
世界的にも珍しい位置づけのクルマであり、直接的なライバルがパッと思い浮かびません。レクサスISやスカイラインはクラスも性格も違うますし、むしろアウディA3セダンやベンツCLAのほうが気になる存在かもしれませんが、ターゲットが少し違います。
そしてWRX S4は、他社の「走るセダン」に対してもパフォーマンスの高さでは上回るほどですが、CVTとステップATの好みはあるかもしれませんね。
WRX S4 STIスポーツ
WRX STIの販売は終了していますが、WRX S4は販売が継続されており、モデル末期になっています。(追記:2021年1月に販売終了しています)
グレード構成は最上級グレード「STIスポーツ EyeSight」のみの設定とし、「GT」「GT-S」グレードを廃止。また、WLTCモード燃費表記(11.2km/リットル)に対応しており、価格は416万9000円。
WRX S4をスバルのモータースポーツ部門を担うSTIがチューニングを手がけたモデルとなっています。
足回りなどのチューニングに加え、ビルシュタイン製フロントストラット「DampMatic II」や、ボディ補強パーツを搭載するなどワンランク上の走りを実現しています。
【2014年〜】初代 WRX STI (VAB)
WRX STIは、S4の運動性能をさらにハイパフォーマンス化し、スポーツ性をさらに高めたモデルです。WRX STIは方向性があきからに異なります。
動力性能で比較するなら、迷うことなく「WRX STI」です。
全長×全幅×全高 | 4595×1795×1475mm |
ホイールベース | 2650mm |
エンジン | 水平対向4気筒 2L ツインスクロールターボ(EJ20) |
圧縮比 | 8.0 |
最高出力 | 308ps/6400rpm |
最大トルク | 422Nm/4400rpm |
ミッション | 6MT(TY85) |
アイサイト | × |
プラットフォームはモデルチェンジ前のインプレッサWRX(GVB型)を改良したものを採用しています。
ただし、「基本設計が一緒」というだけで、実際にはWRX専用チューンで大幅に補強が入ってボディ剛性が向上しており、プラットフォームもボディも専用と呼んでいいレベルになっています。
ボディ形状の異なるステーションワゴンのレヴォーグとは剛性の与え方が異なりますし、4代目インプレッサにそれだけのコストをかけると過剰品質になりますので、スポーツセダンとして独立車種となったのはこれが理由だと思います。
そして、最大の違いは、エンジンとミッション。
旧来の「インプレッサWRX STI」のDNAである「WRX STI」は、エンジンを引き続き水平対向4気筒 2L ツインスクロールターボ(EJ20)が採用されています。
そこまで尖った性能を求めないユーザー層向けの「WRX S4」は、同じ水平対向4気筒でも新世代のFA20直噴ターボが採用されていますが、EJ20のようにショートストロークで高回転まで突き抜けるエンジンでは無いものの、経済性と性能のバランスを考えた選択であり、これがキャラクターを大きく分けています。
とはいえ、歴史ある古いエンジンである「EJ20」は、初代レガシィの頃とはまったくの別物で、燃費など経済性より性能優先で考えた場合、スバルが選択するのはつねにEJ20なんです。
ミッションはご存知の通り、6MT(TY85)とCVT(TR690)でまったく別の仕様になっています。
最後の「EJ20」搭載モデル

1989年1月、初代レガシィに初めて搭載されたEJ20エンジン。2019年12月末で、EJ20エンジンの生産を終了します。
名機「EJ20」エンジンと呼ばれるのは、これまで数多くの競技で実績残してきたエンジンだからです。
WRX STIのEJ20は、ECUの学習機能が新世代エンジンのFA/FB型に近いレベルになっており、走るほどに最適な状態を探る仕様となっているところと性能の個体差バラツキや、熱ダレによる出力の低下幅が少なくなっているのが印象的です。
ECU制御の精密化により、アクセル踏み込み量25%で3代目での50%を超える加速度を発揮。
インタークーラーの冷却効率が向上で圧力損失は大幅に減少し、理論的にはタービンの大型化と同様の効果が得られました。
EJ20は20数年作り続けただけあって、品質は非常に高いレベルに達しており、EJ20の最終形態が搭載されていると思って良いです。
先代とは違う6速MT(TY85)
まず、5速MTである「TY75」はご存知でしょうか?
スバル1000時代(1966年)に開発したトランスミッションがベースとなっていて、スバルのMTの長い歴史を支えています。「TY75」という名称が有名になったのは、初代インプレッサWRX STIの5MTを壊してしまう人が多く「ガラスのミッション」と呼ばれていました。
そこで、さらなるトルクアップに対応するため、新たな6速トランスミッションを開発され、様々なスバル車に搭載れてきました。
300馬力程度が上限のスバル市販車にとっては「TY85」では大きすぎて無駄だという意見もありますが、WRX STI(VAB)のTY85と呼ばれる6速ミッションについては、先代の仕様そのままではないです。
シフト操作時のフィーリングを改善。シフト操作の節度感のアップ。特に各ギアからニュートラルに戻した際の手応えがバッチリです。
DCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)についても、リアグリップの限界性能の向上に伴い制御を変更しています。
ブレーキ性能とリヤの安定性

先代のインプレッサWRXからブレンボ製ブレーキキャリパーを採用しています。
前期モデルの場合、ブレンボ製の4ポッドキャリパーと通常のブレーキローター。後期モデルでは、6ポッドキャリパーとスリッド付きブレーキローターになります。サーキット走行で十分に耐えられます。
対向ピストン・キャリパーのノウハウを最も持っているのがブレンボであり、サーキット走行など温度が上がった領域でのノウハウも他メーカーに比べるとダントツの信頼性があります。
そして、WRX STIの最大の特徴はリヤの安定性が高いことです。
スバルのラリードライバーである新井敏弘選手をはじめ、歴代WRXでラリー競技に参戦してきたドライバーたちは「VAB型の最大の美点はリアの安定性」と口を揃えます。
イメージとしては、サーフィンやスケボーなどの横乗り系スポーツのように、後ろ足を重心の軸としながら自在に向きを変える感じです。
リアの安定性の高さは、高度なボディ作りによるもので、先代比でねじり剛性は40%以上、曲げ剛性は30%以上と剛性の数値は大幅に向上。
サスペンションのバネレートは相当高められているので、ハードな乗り心地となっているにも関わらず、乗り心地は上質感を増しており、普段使いにも使える足回りとなっています。
私は今まで全てのWRXシリーズを運転してきましたが、VABに関してはリヤの安定性と乗り心地の両立がしっかり作り込まれている印象ですね。
最強のVAB型「S209」

限定車といえば、WRX STI(VAB)の最後の特別仕様車である「EJ20 ファイナルエディション」。ゴールド塗装のアルミホイールやSTIのカラーであるチェリーレッドのアクセント、内装はレカロシートをはじめとする専用装備などを採用した限定車です。
限定台数555台に対して商談応募は約1万3000件以上と、23倍以上という狭き門であったことも話題となったのは記憶に新しいです。
(私も応募しましたが落ちました。)
他にもWRX STIには、これまで「Sシリーズ」というコンプリートカーの限定車が登場しており、いずれも人気を博しています。
2015年に400台限定で販売された「S207」は、発売当日にほぼ完売。その2年後の2017年に発売された「S208」は、スバルとして初めてとなる抽選販売がおこなわれた特別モデルで、450台の販売台数に2600件以上の応募が寄せられるなど、どのモデルも入手困難となっています。
北米限定ではありますが、2019年には「S209」が発売。
北米でのスポーツモデルのイメージを更に高めるために、北米における強力なイメージリーダーとして『S209』を投入したと言われており、北米初のSシリーズの誕生となりました。
最大の特徴は、WRX STI専用の「EJ25型」をベースにしています。
インテーク、エキゾーストシステムやターボシステムが専用チューニングとなり、最高出力は歴代WRX STIモデルで最高となる346psを発揮。
ニュルブルクリンク24時間レース車両で実証されたタワーバーやドロースティフナーといった独自のフレキシブルパーツに加え、軽量で車体剛性を最適化するカーボンルーフを採用しています。
Sシリーズにおいて、初めてオーバーフェンダーが採用されたのもポイントです。
VABの最終形態。入手は相当困難です。専用パーツだけでもなんとか手に入れたいみたいものですね。
今後のWRXシリーズ
8月20日に新型レヴォーグの予約受付が開始され、いよいよ10月の正式デビューに向かっています。
WRX S4は関してはモデル末期になっており、最後の年次改良で2020年7月6日にSTIスポーツに1本化されています。最後のモデルですね。
その後、2021年にWRX S4がフルモデルチェンジが発表されて、その翌年の後半にWRX STIがフルモデルチェンジして発表される情報があります。
今ある情報では、水平対向4気筒2.4Lターボを搭載してくるというところ。
WRX STIに関しては、最高出力400ps、最大トルク50㎏m程度になってくるのではないかと言われています。プラットフォームは「SGP」(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用し、「VIZIVパフォーマンスSTIコンセプト」の取り入れると思われます。
デザインは、新型レヴォーグがベースになってくるのかなー?
まだ社員である私にも分かりませんが、今後の情報に期待しましょう。
WRX S4とSTIの違いって何?