さっそくですがこの記事にたどり着いた人は、こんな感じではないでしょうか?
- EJ20エンジンってどんなエンジンなの?
- EJ20エンジンについて深掘りしてほしい
- EJ20エンジンの歴史について知りたい
EJ20エンジンについてはネット上にたくさん記事があります。
ですが、もっとマニアックな詳細が書かれている記事ってそんなにないんですよね。

この記事では、現役社員である私がEJ20スバル水平対向エンジンについて徹底解説します。
主にGRB型インプレッサWRX STI〜現在まで。最後にモータースポーツに関するコンテンツも書いています。
興味のある部分だけでもご覧ください。
【後編】EJ20エンジン|スバル水平対向完全ガイド【現役社員が徹底解説】
もくじ
- 1 【後編】EJ20エンジン|スバル水平対向完全ガイド
- 1.1 EJ20型ターボエンジンの進化(2007年〜)
- 1.1.1 目標性能
- 1.1.2 エンジン概要
- 1.1.3 シリンダーブロック
- 1.1.4 シリンダーヘッド
- 1.1.5 ピストン
- 1.1.6 コンロッド
- 1.1.7 クランクシャフト、コンロッドメタル
- 1.1.8 吸排気デュアルAVCS
- 1.1.9 カムシャフト
- 1.1.10 オイルポンプ
- 1.1.11 インテークマニホールドの変更
- 1.1.12 電子制御スロットル
- 1.1.13 TGV(タンブルジェネレーターバルブ)
- 1.1.14 ターボチャージャーの変更
- 1.1.15 大容量インタークーラーの採用
- 1.1.16 ターボ前ダクト変更
- 1.1.17 メタル触媒+セラミック触媒の作用
- 1.1.18 等長等爆エキゾーストマニホールドの変更
- 1.1.19 2次エアシステムの採用
- 1.1.20 エンジンパフォーマンス
- 1.1.21 STIコンプリートカー【S206、S207、S208】
- 1.2 モータースポーツ
- 1.1 EJ20型ターボエンジンの進化(2007年〜)
- 2 自動車史に残る名機「EJ20」はスバルの「財産」
【後編】EJ20エンジン|スバル水平対向完全ガイド
EJ20型ターボエンジンの進化(2007年〜)
2007年にパフォーマンスとクオリティの両面において、スバルの走りのトップエンドモデルと呼ぶに相応しいクルマとして、インプレッサWRX STIは、GDB型からGRB型へ生まれ変わります。
GDB型に対し、低速域のトルク強化を図ることで「どの回転域からでも思い通りに加速できる性能」をテーマにさらなる性能向上を果たします。
同時に環境性能にも配慮され、平成20年排ガス規制U-LEVに適合します。
その結果、300PSを超える308PS/6400rpm、422Nm/4400rpm(エンジン回転数2000rpm後半で最大トルク9割以上)でのパフォーマンスを発揮します。
目標性能
GRB型インプレッサWRX STIのエンジン開発にあたって、これまで以上のパフォーマンス向上を図ることは必須。
ベースエンジンでは、これまでの開発で十分な実績を積んできたEJ20型ターボとし、先行してレガシィ用EJ20型ターボエンジンに搭載されていた吸気デュアルAVCS、電子制御スロットルなどのほかに、インタークーラーの大型化を行いました。

特徴なのは、大幅な諸元を変更することなくエンジン部品の基本性能の向上によって得られた308PSであることです。
エンジン概要
GRB型インプレッサWRX STIのエンジンは、出力性能の向上だけでなく、レガシィやフォレスターに投入された環境性能向上アイテムを織り込み、燃費や排ガス性能との融合を図りました。
主な変更点はこちらのとおり
- カムシャフト変更
- シリンダーヘッド燃焼室形状変更
- シリンダーヘッド吸気/排気ポート形状変更
- シリンダーヘッドウォータージャケット変更
- 吸排気デュアルAVCS
- バルブスプリング変更
- インテークマニホールド変更
- 電子制御スロットル
- ターボコンプレッサーハウジング変更
- インタークーラー大型化
- 触媒変更
- シリンダーブロック強化
- コンロッド強化
- TGV追加
- 2次エアシステムの追加
シリンダーブロック
シリンダーブロックのライナー部は変形量低減(真円度向上)を目的に、ライナー外周部をアルミとの密着性を向上させる形状に変更。
WRCのレギュレーションでは、参戦する車両に搭載するエンジンのシリンダーブロックは、量産と同一品を使用する必要があります。
WRC参戦を視野に入れていたBC型レガシィ、GC8型インプレッサに搭載されていたEJ20型エンジンは、クローズドデッキ式を採用し、高出力化(高筒内圧)によるシリンダーヘッドガスケットのシール性能を確保していました。
GDB型シリーズからのEJ20シリンダーブロックは、生産性向上のためセミクローズドデッキ式を採用していましたが、GRB型シリーズからはクローズドデッキ式と同じレベル以上のデッキ面剛性を得るためにブロック外周のフープ部の径を拡大(肉厚9→11.5mm)しました。
2008年末にWRCワークス活動は終了しましたが、このノウハウは後の量産車をはじめ、さまざまなモータースポーツ活動に受け継がれます。
シリンダーヘッド
吸気ポートはストレート化による燃焼改善を実施。出力向上を図りました。また、排気ポートも掃気能力向上を狙って形状を変更されます。
燃焼室は点火プラグ周りの形状変更を行い、点火プラグの突き出し量を最適化。またウォータージャケットは排気ポートと点火プラグ周りの冷却強化によりプレイグニッション性能向上を図られています。
シリンダーヘッドは、シリンダーブロック同様にWRCのレギュレーションにより素材共用が必須となるため、デッキ面近くのウォータージャケット部にブリッジ形状を追加してヘッドガスケットシール信頼性を向上。
また、ヘッドボルトボス部に補剛リブを追加して燃焼室変形改善やカムジャーナル部の同軸度向上を図られています。
シリンダーヘッドガスケットは、ガスシール性能および信頼性向上のため、これまでも3層メタルガスケットを採用してきていましたが、冷却通路変更にともない新設されました。
ピストン
WRCにおける量産車ベースカテゴリーのグループNや、国内量産車ベースのモータースポーツカテゴリーとなるスーパー耐久にて異常燃焼(ノッキング)によるピストン破壊が発生していました。
そのため、レース毎のオーバーホールが必要となりメカニック負担が大きい状況でした。
また攻めたセッティングができずに、出力面で競合他社に遅れをとっていました。
そこで2NDランドの強化を目的に形状を変更し、静的評価にて40%の耐力向上を図られています。
新 | 旧 | |
TOPランド幅 | 5.0mm | 6.0mm |
TOPリング溝底径 | Φ84.0mm | Φ84.2mm |
コンロッド
ピストン同様にモータースポーツからの要望で、ノッキング耐力の向上を図られています。
主にロッド部の断面厚さを14→16mmに変更し、座屈強度を13%程度向上しています。
クランクシャフト、コンロッドメタル
クランクシャフトに使用するメタルにおいて、Pbフリー化環境対応が必要となります。
そこで、クランクシャフトとメタルをセットで再検討し、従来から採用している塩浴軟窒処理をしたクランクシャフトを再度設計されました。

Pbは鉛のことです。
近年、鉛の有毒性が明らかになり、環境問題として指摘されるようになりました。
コンロッドメタルは、高出力機に鋼合金コンロッドメタルを採用。
このタイミングでPbフリー化環境対応を実施されました。
吸排気デュアルAVCS

BL、BP型レガシィ EJ20型エンジンに搭載している吸排気デュアルAVCSを採用し、より理想的なバルブタイミングを実現することであらゆる運転状況下において優れたエンジン効率を達成。
主に、一般走行中に使用頻度の高い2000rpm〜4000rpm付近のトルクを向上。
レベルアップした力強い加速を実現しつつ、高回転域でも伸びのあるフィーリングを達成。
あわせて排気ガス規制に対応し、燃費改善に貢献します。
カムシャフト
インテーク側カムプロフィールとカムタイミングを変更。吸気能力向上を狙い高リフト化、および開角を拡大されました。
エキゾースト側カムプロフィールおよびカムタイミングは早開きを実施して触媒の早期活性化を図り、環境対応させました。
カムシャフトの素材は、鋳鉄材から焼結材へ変更。高強度化および中空形状による軽量化を図られています。
オイルポンプ
吸排気AVCS採用のため、オイルポンプの吐出容量を増やす必要がありました。
そこで従来からのオイルポンプと同じサイズでありながら、ロータ歯型最適化によるフリクション低減を実施。
吐出容量アップ・フリクション改善・従来レイアウト内に収まる大きさを両立させました。
インテークマニホールドの変更
インテークマニホールドは、GDB型Cタイプで販売を行なっていた北米向けWRX STIに搭載されていたEJ25型エンジン用を流用し、電子制御スロットルおよびTGVのアイテム追加に対応しています。
電子制御スロットル
ドライバビリティ向上、排ガス浄化性能向上、燃費向上のために電子制御スロットルバルブを採用。
ボア径は、GDB型搭載のEJ20型と同じΦ60とされています。
TGV(タンブルジェネレーターバルブ)
吸入空気と燃料のミキシングを強化し、燃焼室内のガス流動を促進するTGVシステムを採用し、排ガス浄化性能および燃費性能の向上を図られています。
ターボチャージャーの変更
ターボチャージャーは、引き続きIHI製RHF55を採用。
電子制御スロットルを採用にあわせてインタークーラー搭載位置がエンジン後方にセットバックしたことからコンプレッサハウジングを新設。
コンプレッサ入り口径を拡大(Φ56→Φ61)し、デュフィーザー効果による吸気促進を図られています。
大容量インタークーラーの採用

ターボチャージャーで過給された吸入空気を冷却するインタークーラーは、GCB型EJ20へ搭載されていたものを大型化し、冷却性能を向上。
ターボ前ダクト変更
生産ラインでの組み付け性確保のために一部にジャバラを設定していたコンプレッサ前のダクトは、ターボチャージャーの搭載要件を見直すことで廃止し、コンプレッサ前で空気流れの剥離改善を行われています。
メタル触媒+セラミック触媒の作用
排ガス浄化性能と排気圧損低減のため、熱容量の小さく圧力損失の低いメタル触媒(30ミル400セル)を採用。
2次エアシステムによりメタル触媒の早期活性化が図られるだけでなく、後方のセラミック触媒(3ミル400セル)の昇温が促進、活性化することで、平成20年排ガス規制U-LEVの浄化性能を得られています。
等長等爆エキゾーストマニホールドの変更
排気AVCSのオイルコントロールバルブとの干渉回避のため、エキゾーストパイプの分割部を変更するとともに、ターボチャージャーへのガス導入レイアウトを見直し、性能向上を図られています。
2次エアシステムの採用
低温始動直後のエンジン暖機中の余剰燃料を2次エアポンプによって強制的に排気ポートに送り込んだ空気(酸素)と排気熱で燃焼させて、その燃焼熱により触媒を早期活性化し、排ガス浄化性能を向上させています。
エンジンパフォーマンス
GRB型インプレッサWRX STIは、2007年10月に5ドアハッチバックで販売されたのち、同一エンジンを搭載したセダンGVB型が2010年7月に販売されます。
また、このタイミングより、車名の「インプレッサ」を廃止し、「WRX STI」として、2014年8月にはVAB型にスイッチします。
エンジンは、車両変更によるインタークーラーなどの一部変更がされましたが、308PS/6400rpm、422Nm/4400rpmのパフォーマンスを継承されています。

整備面からいうと、VAB型のEJ20からは圧倒的に故障が少なくなっており、大幅な諸元変更はありませんでしたが品質がかなり改善された印象です。
STIコンプリートカー【S206、S207、S208】

2011年11月にSTI社からGVB型をベースとしたコンプリートカー【S206】が販売されます。
導入されたアイテムは、GDB型S203、S204と同様に、
- バランスドクランクシャフト・コンロッド・ピストン
- 専用大型ボールベアリングターボチャージャー
- 専用マフラー
- 専用シリコンターボ前ダクト
などによってエンジン出力は同一の320PS/6400rpmでありますが、トルクは431Nm/3200〜4400rpmに向上されています。
また、2015年12月にVAB型をベースとした【S207】を発売。
S206と同一エンジンでありながら、マフラーの低背圧化によって、エンジン出力を328PS/7200rpm、トルクは431Nm/3200〜4800rpmに。
2017年12月には、S207をベースとした【S208】は、インタークーラーの導風レイアウトの改善によって、329PS/7200rpmまで向上されています。
モータースポーツ

ここからは、EJ20とモータースポーツに関して振り返ります。
1989年当時スバルはモータースポーツについてプライベーターからの支援しか行なっておらず、他の国内メーカーのようなマーケティングに直結した規模の大きなモータースポーツの運営ができませんでした。
そこで、技術開発および技術の活性化を推進する専門会社として1988年にSTI(スバルテクニカルインターナショナル)を設立します。
そして、STIの最初の仕事として、その当時スバルの持てる技術を集結して作ったクルマを世界にアピールするべく、1989年1月2日に世界戦略車である初代レガシィでFIA(国際自動車連盟)が公認する10万キロ世界速度記録に挑みます。
その後に、次なる目標としてスバルユーザーに対して量産車の良さをアピールするカテゴリーとして当時にグループA車両で4WDターボ車両が上位を占めていたWRCに白羽の矢を立てます。
WRCへのチャレンジ(1990〜2008年)
WRCは、FIAが主催するラリー競技でありF1と並ぶ世界選手権。
交通が遮断された一般道を市販車ベースのマシンで走り、タイムを競う競技であり、ヨーロッパを中心としてアフリカ・中南米・アジア・オセアニアなどの地域で開催されるモータースポーツです。
スバルは1990年にレーシングコンストラクタであるプロドライブ社と提携し、WRC挑戦を開始。
その後に1990年の参戦から2008年のワークス活動終了まで3度のマニファクチャラーズタイトルと、2度のドライバーズタイトルを獲得。
この19年にわたり、EJ20型エンジンはスバルのWRC参戦を支える重要なエンジンとなりました。
WRCエンジンは、EJ20量産シリンダーブロック、シリンダーヘッドを使用し、ピストン、コンロッド、クランクシャフト、排気系、ターボチャージャー等を規定の改造範囲内で変更し、超高トルク型エンジンへと改良したエンジンです。

ここからは一部の導入技術について解説します。
燃料主導型制御
1990年にレスポンスおよびドライブフィーリング向上のために、電動スロットル化とともに燃料主導型制御と呼ばれるエンジン制御を導入します。
この制御は、アクセルペダルの踏み込み量から最初に燃料噴射量を決めて、吸気モデルから目標空燃費を達成するための吸気流量、電動スロットルの開度を決定し制御するシステムです。
これは従来のDおよびLジェトロニックシステムに対してアクセルレスポンス性能の高さとアンチラグシステム(ロケットシステム)との親和性がよく、1990年のWRC車両に初めて導入されて以降、2008年末のワークス活動終了まで、EJ20のWRC専用制御システムとして改良が重ねられています。
水噴射システム
2005年からWRCに導入されたシステム。
WRCの技術競争の激化とともに、燃焼の高効率化を目指し、水噴射システムの開発がスタート。
2004年までには高負荷時のノッキング抑制のため、インマニ内に1本の水スプレーを設けて運転条件に応じて燃料噴射量と水噴射量と点火時期を統合させた制御を導入していました。
しかし、このシーケンシャル水噴射システムは、2006年にWRCで使用禁止となったため1年だけの投入技術となリました。
アンチラグシステム(ロケットシステム)
アンチラグシステムは、2003年にWRCで初めて導入されます。
EJ20型エンジンは、WRCに参戦する他社直列エンジンに対して排気管長が長く、低速域のトルクを出すのが構造上難しいエンジンであったため、2006年に排気系に燃焼室を持たせた新しいアンチラグシステムを開発し導入されます。
このシステムは、水平対向エンジンのレイアウト上のデメリットをメリットに変える画期的なシステムとなり、2008年末のワークス活動終了までWRC専用システムとして使用されました。

ミスファイアリングシステムとも呼ばれます。
排気ガスのエネルギーが小さいときの低過給を解消するための仕組みとしてシーケンシャルツインターボがありました。
2つの過給機を組み合わせることで、排気エネルギーが小さいときの過給を改善するものでしたが、アクセルオフなどによってターボラグが発生してしまいます。
そこでこのシステムが登場というわけです。
NBR24時間レースへのチャレンジ(2008年〜)
NBR24時間レースは、ドイツのニュルブルクリンクの1周25.378kmのコースを舞台に、24時間でどれだけ長い距離を走れるかを競うレースです。
スバルは、NBRとのつながりが強く、初代インプレッサ発売直後の1992年以来、世界中のあらゆる道の厳しい要素を凝縮しているといわれているNBRで量産車両の開発テストを続けてきました。
モータースポーツでの本格的なNBRチャレンジは、2008年のNBR24時間レースから出場し、12年間の参戦で6度のクラス優勝と高い完走率を果たしています。【完走率92%、勝利数6勝】
NBRエンジンについて
NBRのコースは、世界最長のコースとバックストレート、高低差300mと普通のサーキットとは違った過酷さがあり、以下の3つの要素のバランスが重要です。
- エンジン出力向上
- 24時間に耐えれる耐久性
- レース燃費向上
NBR用エンジンは、量産WRX STIやSTIコンプリートカーSシリーズおよびtSシリーズのEJ20をベースに、ピストン、コンロッド、インテークマニホールド、ターボチャージャー、排気系等を変更し、量産エンジンの良さを生かしつつ耐久および性能向上に必要な最小限の改良を施して参戦を続けます。
スーパーGT300へのエンジン供給(1997年〜)
スーパーGTシリーズは、国内最大規模の観客動員数を誇るモータースポーツシリーズであり、クラス毎にドライバータイトルとチームタイトルをかけ、国内外のサーキット全8戦で争われます。
スバルは、1997年以降、スーパーGT300クラスに一貫してEJ20型エンジンを供給し続けています。
スーパーGT用エンジンの進化
1996年からWRCエンジンをベースにスーパーGT300用エンジンの開発を行い、1997年からCUSCO(クスコ)インプレッサに供給を開始。
開発当初は、WRCエンジンと変わらない仕様でありましたが、サーキットとラリーとの性能要件の違いが大きく、改良が進むにつれて低回転高トルク型エンジンから高回転高出力型エンジンへ進化しました。
高流量ターボチャージャー
スーパーGT300クラスは、EJ20を供給し始めた1997年から現在までルール変更が重ねられ、参加車両の高出力化が進められてきました。
参戦当初は、360馬力相当の出力でしたが、2010年以降のFIA-GT3車両の参入にあわせて、性能拮抗を狙いとして毎年約10馬力性能向上が進められ、近年では500馬力相当に近づいてきています。
このEJ20の高出力化に向けては、IHI社と共同でWRC用に開発したターボチャージャーをベースにスーパーGT用コンプレッサーブレードおよびタービンブレード、ハウジング等の開発を続けて、スーパーGT専用ターボとして供給を現在も続けられています。
ドライサンプシステム

スーパーGT300は、車両重量、エンジン出力、排気量、空力特性の違う車両がBOP(バランスオブパフォーマンス)という独自の性能調整により各車両の競争力のバランスを保っています。
現在スーパーGT300に参戦するBRZは、水平対向エンジンの優位性であるエンジン全高を限界まで下げることができるドライサンプシステムを導入し、エンジンクランク中心を地上面から約250mmの高さに搭載するとともに、ヘッド上面高さを約350mmにすることで低重心を図り、車両トータルの競争力を高めています。
自動車史に残る名機「EJ20」はスバルの「財産」

1989年の初代レガシィから2019年のWRX STI EJ20 ファイナルエディションまで約30年にわたり何百人もの開発エンジニアによってEJ20型エンジンは育てられてきました。
自動車史に残る名機「EJ20」は、デジタルツールがなかった時代に設定された、まさに「奇跡」ともいえるベースディメンジョンであったかもしれませんが、EJ20型エンジンに携わったすべてのエンジニアの熱い想いが成し遂げられた偉業です。
多くのスバルファンに支えられ、モータースポーツの世界での感動を残してきたEJ20型エンジンは、時代とともに量産モデルとしては去りゆくことになりましたが、このエンジンが成し遂げた偉業はスバルにとって大きな財産となり、永遠に残り続けます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。